速疾立驗魔醯首羅天説阿尾奢法

速疾立驗魔醯首羅天説阿尾奢法 一卷

開府儀同三司・特進・試鴻臚卿・肅國公、食邑三千戸、賜紫、贈司空、諡大鑒、正號大廣智、大興善寺三藏沙門不空、詔を奉じて譯す。

一、因縁と阿尾奢法の開示

爾の時、那羅延天、香醉山の頂に在りて、魔醯首羅を自在宮中に請じ、供養し、頭面して足を禮す。

魔醯首羅に白して言わく、

「我が乘ずる所の迦樓羅使者、能く世間の所求の事要を成辦すれども、且つ速疾なること能わず。唯だ願わくは大天、未來の有情の為に、速疾立驗阿尾奢法を説きたまえ」と。

時に魔醯首羅、那羅延に告げて言わく、

「汝、當に諦かに聽くべし。我、汝が為に速疾成辦使者の法を宣説せん。

能く息災・増益・降伏・敬愛を作し、亦た能く夜摩界に於いて往來し使役す。能く未來の善惡・吉凶・成敗、旱澇の不調、隣國の侵擾、惡人の叛亂、種種の災祥を知る。

二、童男・童女の簡擇と前方便

若し未來の事を知らんと欲せば、當に四五の童男、或いは童女を簡擇すべし。年は七八歳なるべし。身上に瘢痕・𭼩記無く、聰慧靈利なる者なり。

先に一七日、素食を服せしめ、或いは三日食せしむ。

凡そ法を作さんと欲せば、要ず吉日、或いは鬼宿、或いは歳宿の直を須う。甘露直・直日、最も勝れたり。

沐浴し、遍身に香を塗り、淨衣を著け、口に龍腦・豆蔲を含む。

三、小壇の建立と前加持

持誦者、面を東に向けて坐し、身前に白檀香を以て一小壇を塗る。一肘量なるべし。

童女等をして壇上に立たしめ、花を童女の前に散ず。

一の閼伽爐を置き、安息香を取り、大印眞言を以て七遍加持し、燒いて童女をして手を熏ぜしむ。

又た赤花を取りて七遍加持し、童女の掌中に安んじ、便ち手を以て面を掩わしむ。

四、大印と行者自身の加持

則ち持誦者、大印を結ぶ。

二手合掌し、外に相交え、左、右を押し、其の掌を虚しくすれば即ち成ず。

此の印を以て自身の五處を加持す。所謂る額・右肩・左肩・心・喉なり。

頂上に印を散じ、即ち眞言を誦して曰く、

大印眞言

曩謨婆誐嚩底摩賀引母捺㘈二合迦吒攞施棄底哩二合*施㘈底哩二合路左儞伊捨引儞跛輸跛帝娑嚩二合引賀引

五、童女の五輪加持

則ち此の印を以て其の童女の頂を按ず。

則ち頭上に三角・赤色・熾盛の火輪を想う。光、眞言を誦すること七遍。

火輪眞言に曰く、

唵阿儗儞二合施棄*娑嚩二合引賀

則ち此の印を以て童女の口上を按ず。

彼の口中に水輪を想う。白色、半月の形なり。眞言を誦すること七遍。

眞言に曰く、

唵惹攞祖哩二合拏引摩抳*娑嚩二合引賀

次に應に印を移して彼の心中を按ずべし。

地輪を想う。形は方、黄色なり。七遍、眞言を誦す。

眞言に曰く、

唵摩賀麼攞跛囉訖囉二合摩*娑嚩二合引賀

次に應に印を移して彼の臍中を按ずべし。

風輪を想う。其の形は圓、黒色なり。七遍、眞言を誦す。

眞言に曰く、

唵尾曩多引句攞曩那*娑嚩二合引賀引

次に應に大印を以て彼の兩脚を加持すべし。

迦樓羅を想い、眞言を誦して曰く、

唵跛乞史二合囉*引惹跛那*娑嚩二合引賀引

次に應に大印を以て甲冑眞言を誦し、童女を加持して遍身に旋轉す。

眞言に曰く、

唵迦嚩左摩部引多引地跛帝*娑嚩二合引賀

六、行者自身を魔醯首羅天と観ず

行者、次に應に自身を魔醯首羅天と為すべし。

三目、頭冠・瓔珞をもって莊嚴す。頭冠上に佛・半月有り。項上青く、十八臂なり。

手に種種の器仗を持す。龍を以て紳線と為し、角絡に繋ぐ。

又た彼の塗血・寫及。

須臾の頃、自身を觀じ已りて、次に應に大印を以て彼の童女一百八の命節を護るべし。

眞言に曰く、

唵一蜜哩二合體尾野二合吒多二惹縛引揄囉迦苫

其の大印を結び、及び眞言を誦し、遍身に旋繞して加持すれば、則ち一百八種の命節を護る。

次に又た大印・眞言を以て花香及び閼伽等を加持す。

次に又た大印・眞言を以て十方界を結ぶ。

七、魔醯首羅使者の招請

則ち應に此の童女の前に対して、魔醯首羅使者眞言を誦すべし。

曰く、

魔醯首羅使者眞言

唎躋吒迦一麼多那引誐二尾灑娜跛拏三薩摩那誐囉四尾訖囉二合摩五尾羅引薩誐底六𠼝濟吒迦七布囉二合哩*跛引擔囕二合八左羅左*羅九左里左*里十*跛拏*跛拏十一*跛尼*跛尼十二伴上爾伴爾十三羯恥羯恥十四阿尾捨阿尾捨十五𠼝躋吒迦十六嚕奴噌二合抧孃二合跋野底*娑嚩二合引賀十七引

此の眞言、應に七遍誦すべし。

則ち彼の童女、戰動す。當に聖者の身に入るを知るべし。

則ち更に彈指して眞言を誦す。

若し現驗無ければ、次に摧迫使者眞言を誦して曰く、

摧迫使者眞言

𠼝𠼝耶一摩魯呬多二引素囉素囉三引布爾多賀那賀那四波囉二合憾麼二合引那尼五那覩嚕二合尼都嚕二合尼六謨尼謨尼七伴上爾伴*上爾八羯恥羯恥九阿尾捨阿尾*捨十𠼝躋吒迦十一嚕奴*噌二合枳孃二合跛野帝十二*娑嚩二合引訶十三引

誦此の眞言、必ず速かに應驗す。

未來の善惡、一切の災祥を問う。

八、棒印による問答

若し語らず、或いは語ること遲ければ、則ち棒印を結ぶ。

二手合掌す。二の無名指は外に支う。二の中指は並び立つ。二の頭指は各おの無名指の頭を鉤く。

二の大指は各おの中を押さしめて交う。

眞言を誦して曰く、

棒印眞言

唵一母那誐二合囉二都嚕都嚕三娑嚩二合引賀引四

此の棒印を結べば、則ち語る。

種種の事を問うこと已りて、大印眞言を以て閼伽を加持し、三たび童女の面に灑げば、即ち結を解く。

九、使者眞言の先行成就と使役

此の使者眞言、先に應に一萬遍誦すべし。則ち法成ず。則ち身の來るを見る。

須らく閼伽を獻じて願を乞うべし。

「願わくは聖者、一切處・一切時に使用して皆な辦ぜよ」と。

則ち隱れて現れず。

已後、使わんと欲せば、一小壇を塗り、香花・飲食を著け、眞言を一百八遍誦すれば、則ち身を現ず。

則ち言う、

「龍宮中より長年藥・如意寶珠を取れ」と。

或いは夜摩王の處に使して、延命・増益・壽命せしめ、或いは上に使して妙甘露を取らしめ、或いは他國に使して其の善惡を問わしむ。

亦た能く軍陣を助けて他敵を摧破す。

種種の使用、悉く能く成辦す。

此の法、一切迦樓羅法の中に最も殊勝なり。祕密にして得難し。

汝、當に法器にして傳授するに堪うる者を揀擇して之を傳うべし。

「人の器に非ざる人には、即ち他を損ず。已後、此の法成ぜず。是の故に應に極めて祕密にして、妄りに傳受すること勿かれ」と。

十、大自在天迦樓羅陀羅尼

大自在天迦樓羅陀羅尼に曰く、

那謨婆伽嚩底一嚕馱囉野二瞋那劫波囉野三薩嚩微那延迦囉*野四薩嚩羯摩莎馱那*野五薩嚩嚩尸迦*羅拏野六薩嚩設覩嚕二合尾那捨那野七唵八迦波羅質擔瞋那迦波羅部擔九嚕訥嚕二合枳孃二合*跛野帝十*娑嚩二合引賀

此の陀羅尼。

調伏法

人を調伏せんとせば、赤芭蕉葉を取りて彼の人を畫き、心上に名字を書し、陀羅尼を一百八遍誦し、即ち牛糞の中に埋むれば、即ち調伏す。

離間法

人をして相い憎ましめんと欲せば、多羅葉に彼の男女の形を畫き、名を書して相い背け、線を取りて纏う。

鼠狼の毛・山鷄の毛・蛇の退皮を取りて燒き熏じ、陀羅尼を一百八遍誦し、劫波羅の中に安んじ、即ち屍林の中に埋著すれば、便ち相い憎む。

除却すれば、舊に依る。

敬愛法

若し相い憐れましめんと欲せば、還って多羅葉上に彼の夫の形を畫き、名を書して相い合わせ、白線を取りて繋ぐ。

雀兒の毛・蛇皮を取りて燒き熏じ、陀羅尼を一百八遍誦すれば、即ち相い憐む。

闘乱法

又た法。人をして相い打たしめんと欲せば、大虫の皮、或いは牛皮に於て、二人の相い頭髻を把るを畫き、名を書して著け、線を取りて纏い著け、火上に熏じ、碓臼の下に埋むれば、即ち日日に相い打つを得。

除けば則ち止む。

調伏法

又た法。若し人を調伏せんと欲せば、貝多葉上に人の形を畫き、名を書し、陀羅尼を一百八遍誦し、即ち床下に埋むれば、即ち調伏を得。

呪詛法

又た法。人をして尿血せしめんとせば、多羅葉を取りて彼の人を畫き、姓名を書し、釘を取り、陀羅尼を一百八遍誦し、上に七七日釘づくれば、即ち除去を得。

十一、眼藥の法

次に眼藥の法を説く。

若し竪子を調伏せんとせば、蛇頭・竭羅安善那・青木香・寫甲・蜂二介を取り、黒月十四日に擣きて抹と作し、肉に和して眼角に點ずれば、一切の竪子隨逐す。

天上も亦た來たる。人間のみに非ざるなり。

速疾立驗魔醯首羅天説迦婁羅阿尾奢法 一卷

目次

一、現代語訳唐の不空が詔を奉じて訳した、一卷の儀軌である。

そのとき那羅延天は香酔山の頂上にいて、自在宮のなかで魔醯首羅(大自在天)を請じ、供養して頭面に足を礼し、こう申し上げた。「わたしの乗る迦楼羅の使者は、世間で求める事柄を成し遂げることはできる。だが迅速ではない。どうか大天よ、未来の有情のために、速やかに効験の現れる阿尾奢法を説いてください。」魔醯首羅は那羅延に告げた。「よく聞け。わたしは、使者を速やかに成し遂げる法を説く。息災・増益・降伏・敬愛をなし、夜摩界へ往来させて使役し、未来の善悪・吉凶・成敗、旱魃や洪水、隣国の侵寇、悪人の反乱など、種々の災祥を知ることができる。未来の事を知ろうとするなら、四五人の童男または童女を選べ。年は七八歳、身に瘢痕や黒子がなく、聡く利発な者とする。まず七日間、あるいは三日間、素食させる。修法には吉日を要する。鬼宿、あるいは歳宿の直日。甘露直・直日が最も勝れる。沐浴し、全身に香を塗り、浄衣を着て、口に龍脳と豆蔲を含む。持誦者は東面して坐し、身前に白檀で一肘四方の小壇を塗る。童女らを壇上に立たせ、その前に花を散らす。閼伽炉を置き、安息香を大印真言で七遍加持して焼き、童女の手を熏す。さらに赤花を七遍加持して掌に置かせ、手で顔を覆わせる。持誦者は大印を結ぶ。両手を合掌し、外側で交差させて左が右を押さえ、掌を虚しくすれば印は成る。この印で自身の五処——額・右肩・左肩・心・喉——を加持し、頂上で印を散じて真言を誦する。この印を童女の頂に按じ、頭上に三角で赤く燃え盛る火輪の光を観想し、火輪真言を七遍誦する。次に口に按じて、口中に白色半月形の水輪を観想する。次に心に移して方形黄色の地輪、臍に移して円形黒色の風輪を観想する。両脚を加持して迦楼羅を観想し、さらに甲冑真言で全身を旋回加持する。行者は次に自身を魔醯首羅天と観ずる。三目、頭冠と瓔珞で荘厳され、冠上に仏と半月があり、項は青く、十八臂で種々の器仗を持つ。龍を帯とし、角絡に結ぶ。また血を塗った象皮を纏う。須臾に自身を観じ終えたら、大印で童女の一百八の命節を護る。花香・閼伽を加持し、十方界を結んだうえで、童女の前で魔醯首羅使者真言を七遍誦する。童女が戦慄すれば、聖者が入身したと知る。さらに弾指して誦し、効験がなければ摧迫使者真言を誦する。必ず速やかに応験し、未来の善悪・災祥を問うことができる。語らない、または遅いときは棒印を結ぶ。問い終えたら、加持した閼伽を三たび面に灑いで解界する。この使者真言は、まず一万遍誦すれば法が成る。身が現れたら閼伽を献じて願を乞う。「一切処・一切時に使用を成し遂げよ」と。すると隠れて現れなくなる。以後使うときは、小壇に香花飲食を供え、真言を一百八遍誦すれば現れる。龍宮から長年薬や如意宝珠を取らせ、夜摩王のもとへ遣って寿命を延ばさせ、上から妙甘露を取らせ、他国の善悪を問わせ、軍陣を助けて敵を摧破させるなど、種々の使用が成就する。この法は一切の迦楼羅法のうち最も殊勝で、秘密にして得がたい。必ず法器に堪える者を選んで伝えよ。器でない者に伝えれば相手を損ない、以後この法は成就しない。ゆえに極めて秘密にし、みだりに伝授してはならない。」以下は付属する大自在天迦楼羅陀羅尼とその応用である。赤芭蕉葉に人を描いて心上に名を書き、一百八遍誦して牛糞に埋めれば調伏する。多羅葉に男女を背中合わせに描き、鼬・山鶏の毛と蛇の脱皮を熏じて頭蓋骨に納め、屍林に埋めれば相憎ませ、取り除けば旧に復す。名を合わせて描けば相憐れませる。虎皮または牛皮に二人の髪を掴み合う図を描き、碓臼の下に埋めれば日々相打たせ、除けば止む。貝多葉の人形を床下に埋めれば調伏する。釘で七七日釘じれば尿血を起こさせ、また除去できる、とする。末尾に眼薬法があり、黒月十四日に調合して眼角に点ずれば、対象は人間のみならず天上の者まで随逐する、と説く。

(末題)速疾立験魔醯首羅天説迦婁羅阿尾奢法 一卷

二、真言の梵語復元(試案)

不空訳の漢字音写は、当時の中期インド語・密教口誦を写したもので、一対一のサンスクリット本文が残っているわけではない。以下は音写と並行するガルダ系密教語彙からの再構である。* は特に不確実。1. 大印真言(五処加持)
漢字:曩謨婆誐嚩底 摩賀母捺㘈 迦吒攞施棄 底哩施㘈 底哩路左儞 伊捨儞 跛輸跛帝 娑嚩賀 試復元:
namo bhagavati mahāmudre kaṭala-śikhe triśire trilocani īśāni paśupate svāhā 意:帰命したてまつる、世尊女よ。大印よ。…頂髻ある者、三首・三眼なる者、イーシャーニーよ、獣主(パシュパティ)よ。スヴァーハー。
kaṭala-śikhe の意味は未詳。女神格(イーシャーニー=シヴァ妃)への呼びかけ。

daitangkinh.truyenphatgiao.com2. 火輪真言(頂)
oṃ agni śikhe svāhā
意:オーン、火よ、頂髻に。/あるいは「火の焰よ」。3. 水輪真言(口)
oṃ jala cūḍāmaṇi svāhā
意:オーン、水よ、頂珠に。
(祖哩拏摩抳 を cūḍāmaṇi と読む案。別案では複合を崩さない。)4. 地輪真言(心)
oṃ mahābala parākrama svāhā
意:オーン、大力にして勇猛なる者よ。5. 風輪真言(臍)
oṃ vinatā-kula-nanda svāhā
意:オーン、ヴィナター一族の歓喜よ(ガルダはヴィナターの子)。6. 迦楼羅真言(両脚)
oṃ pakṣi-rāja pada svāhā
意:オーン、鳥王よ、足に。/「鳥王の足よ」。7. 甲冑真言
oṃ kavaca mahā-bhūtādhipate svāhā
意:オーン、甲冑よ。大有情の主よ(シヴァの称号)。
原文「摩部多」は mahā-bhūta の略写と見る。8. 一百八命節護持真言
漢字:唵 蜜哩體尾野吒多 惹縛揄囉迦苫 ここは音が短く、確定復元がない。仮に
oṃ mṛtyu-vyāpta … あるいは命節(marman)防護の種子句、と見るにとどめる。9. 魔醯首羅使者真言
冒頭 唎/𠼝 は ḷṃ または ṛṃ。使者を ceṭaka(従僕)と呼ぶ。 試復元の骨格:
*ḷṃ ceṭaka *matanāga viṣa-darpaṇa samāna-gara vikrama-vilāsa-gati ḷṃ ceṭaka *pratipātraṃ cala cala cali cali paṇa paṇa paṇi paṇi panni panni kaṭṭi kaṭṭi āviśa āviśa ḷṃ ceṭaka rudro ’jñāpayati svāhā 意の大枠:従僕よ。毒に驕るナーガよ。勇み戯れる歩みよ。各脈管で動け、入れ、入れ。ルドラが命じる。スヴァーハー。
反復(cala / paṇa / āviśa)は憑依を促す命令形。阿尾捨 がまさに āviśa「入れ」。

daitangkinh.truyenphatgiao.com10. 摧迫使者真言
骨格:
*ḷṃ ḷṃ *yama-lohita-sura-asura-pūjita hana hana brahmāṇāni truṇi truṇi moṇi moṇi panni panni kaṭṭi kaṭṭi āviśa āviśa ḷṃ ceṭaka rudro ’jñāpayati svāhā 意の大枠:ヤマ・ロヒタ・天・阿修羅に供養される者よ。打て、打て。入れ、入れ。従僕よ、ルドラが命じる。11. 棒印真言
oṃ mudgara turu turu svāhā
意:オーン、槌よ。急げ、急げ。12. 大自在天迦楼羅陀羅尼
namo bhagavate rudrāya chinna-kapālāya sarva-vinayaṃ-karāya sarva-karma-sādhanāya sarva-vaśīkaraṇāya sarva-śatru-vināśanāya oṃ kapāla-citaṃ chinna-kapāla-bhūtaṃ rudro ’jñāpayati svāhā 意:帰命したてまつる、世尊ルドラに。首を断たれた者、一切の規律をなし、一切の業を成就し、一切を調伏し、一切の敵を滅ぼす者に。オーン、頭蓋を積む者、断首となれる者を、ルドラが命じる。スヴァーハー。
chinna-kapāla は「断頭」の異称と見る案。シヴァ=ルドラの激しい相。

三、難語句注阿尾奢(あびしゃ)


梵 āveśa。語根 ā-viś「入り込む」。天・使者・聖者が童子の肢体に遍入し、口を借りて未来を語らせる法。漢訳では阿尾奢・阿尾捨・阿毗舍。民間の託宣・童子降ろしに近いが、ここでは印・真言・五大輪観想で統制する密教儀礼。同系統は『蘇婆呼童子請問経』の鉢私那(praśna/問卜)や、日本では阿比舍法として宮中修法の記録がある。

baike.baidu.com魔醯首羅 / 大自在天
梵 Maheśvara。シヴァ。本経では那羅延(Nārāyaṇa=ヴィシュヌ系)がガルダ使者の迅速化を請い、シヴァが説く。観想は三目・青項(ニルカンタ)・半月・十八臂・龍帯・血塗りの象皮で、シヴァの忿怒相に仏と半月を載せる密教的習合形。迦樓羅 / 迦婁羅
梵 Garuḍa。金翅鳥。ヴィシュヌの乗騎であり、毒とナーガを制する。本経は「迦楼羅法のなかで最も殊勝」と自称し、使者そのものがガルダである。那羅延天
梵 Nārāyaṇa。ヴィシュヌの一名。香酔山(Gandhamādana)の頂上から自在宮のシヴァを請う、という枠物語。命節(みょうせつ)一百八
対応語はほぼ marman(急所・生門)。アーユルヴェーダでは身体の致死的な要点を数え、大要を108とする伝統がある。経文は「一百八種の命節を護る」と繰り返し、憑依の際に童子の生命を損なわないための加持と読める。日本中世に「百会」と見る説もあったが、穴位一つには収まらない。

daitangkinh.truyenphatgiao.com甘露直・歳宿直・鬼宿・直日
宿曜(星宿暦)の用語。

  • 宿直:その日の日中にどの星宿が値するか。
  • 鬼宿:二十八宿の一つ(Punarvasu ではなく、漢訳密教の「鬼」は Maghā 系で語られることが多い。本経は日付選択の吉凶として挙げる)。
  • 歳宿直:その年の歳星(木星)に関わる直日、あるいは年の宿の値日。
  • 甘露直:amṛta-yoga に相当する「甘露の結合日」。宿と曜日の組合せが不死・成就に勝れる日。
  • 直日:単に「その宿が値する日」。文は「甘露直・直日が最も勝れる」と重ねる。

劫波羅 / 迦波羅
梵 kapāla。頭蓋骨。シヴァ=カパーリンの持物であり、墓地(屍林 śmaśāna)の呪法容器。調伏・相憎の項で「安劫波羅中」とあるのは、熏じた葉を頭蓋に納めて埋める意。陀羅尼中の chinna-kapāla も同じ語族。閼伽(あか)
梵 argha / arghya。献水。召請・発遣の両方に用いる。本経では入神のあと、面に三たび灑いで解界する。大印
経自身が「両手合掌、外で交差し、左が右を押さえ、掌を虚しくする」と定義する。以降の火水土風・脚・甲冑・命節・結界は、すべてこの一印を移動させて用いる。塗血寫及
伝本の疑わしい句。字形とシヴァ図像から、ギーベルは 「血を塗った象皮」(塗血象皮)と読む。シヴァが象皮を血のまま纏う図像と一致する。写・象の草書混同が疑われる。

daitangkinh.truyenphatgiao.com夜摩界
梵 Yama。死王の領域。使者を閻魔のもとに遣り、延命を乞わせる、という発想。ガルダが三界を往来する能力の延長。法器 / 非器
密教の器根論。伝授に堪える器でない者へ渡せば、相手を損ない、伝えた側の法も壊れる、と戒める。本経末尾の「極秘密」はこの文脈。四大作壇と五大輪
頂=火(三角赤)、口=水(半月白)、心=地(方黄)、臍=風(円黒)、脚=ガルダ。虚空輪を独立させず、甲冑と結界で覆う構成。童子の身体を小さな宇宙にして使者を住まわせる。棒印
mudgara(槌・棍)。語らない媒霊を強いて発言させる印。真言 turu turu は急促の命令。竪子
ここでは調伏・随逐の対象となる若者・下人を指す俗語的用法。眼薬法の「一切竪子隨逐」も同じ。多羅葉 / 貝多葉 / 芭蕉葉
南アジアの書写材料。多羅・貝多はタラ葉(tāla / tāḍa)、呪符の媒体。赤芭蕉は調伏に用いる「赤い葉」の系統。竭羅安善那
眼薬の成分。密教・医方でいう安善那は añjana(点眼剤)。「竭羅/羯羅」は kāla / kṛṣṇa(黒)に近く、黒色コリリウム系。青木香は木香(kuṣṭha)。「寫甲蜂二介」は字形が崩れており、象甲・犀甲・蜂など複数の読みが可能で、確定しない。黒月十四日
梵暦の kṛṣṇa-pakṣa caturdaśī。新月直前の十四日。降伏・猛呪に用いる夜。尿血を「釘じて起こし、また除去する」
漢訳密教の「病を作し、病を収める」両用の型。害法として書いてある以上、歴史資料として訳すにとどめる。


要点だけ畳むと、本経は
シヴァがガルダ使者の憑依術(āveśa)を那羅延に授ける儀軌
であり、前半が童子託宣、後半が同一陀羅尼による調伏・敬愛・離間の応用である。真言復元は音写の性格上、常に仮説である。特定の一句について異読や別復元を突き合わせたい箇所があれば、そこだけさらに細かく検討できる。

速疾立驗魔醯首羅天説阿尾 奢法一卷  

開府儀同三司特進試鴻臚卿肅國 公食邑三千戸賜紫贈司空諡大鑒 正號大廣智大興善寺三藏沙門 不空奉         詔譯  爾時那羅延天。在於香醉山頂。請*魔醯首羅 画像 於自在宮中。供養頭面禮足。白*魔醯首羅 言。我所乘迦樓羅使者。能成辦世間所求事 要。且不能速疾。唯願大天爲未來有情。説 速疾立驗阿尾奢法 時*魔醯首羅告那羅延言。汝當諦聽。我爲汝 宣説速疾成辦使者之法。能作息災増益降 伏敬愛。亦能於夜摩界往來使役。能知未 來善惡吉凶成敗。旱澇不調隣國侵擾。惡人 叛亂種種災祥。若欲知未來事者。當簡擇四 五童男或童女。可年七八歳。身上無瘢痕𭼩 画像 記。聰慧靈利。先令一七日服素食或三日食。 凡欲作法。要須吉日或鬼宿或歳宿直。甘露 直直日最勝。沐浴遍身塗香。著淨衣口含 龍腦豆蔲。持誦者面向東坐。身前以白檀香 塗一小壇。可一肘量。令童女等立於壇上。散 花於童女前。置一閼伽爐取安息香。以大 印眞言加持七遍。燒令童女熏手。又取赤花 加持七遍。安童女掌中。便以手掩面。則持誦 者結大印。二手合掌外相交。左押右虚其掌 即成。以此印加持自身五處。所謂額右肩左 画像 肩心喉。頂上散印即誦眞言曰 曩謨婆誐嚩底摩賀引母捺㘈二合迦吒 攞施棄底哩二合*施㘈底哩二合路左儞伊 捨引儞跛輸跛帝娑嚩二合 引賀引 則以此印按其童女頂。則想於頭上。三角赤 色熾盛火輪。光誦眞言七遍。火輪眞言曰 唵阿儗儞二合施棄*娑嚩二合 引賀 則以此印按童女口上。於彼口中想水輪。白 色半月形。誦眞言七遍。眞言曰 画像 *唵惹攞祖哩二合拏引摩抳*娑嚩二合 引賀 次應移印按彼心中。想地輪形方黄色。誦七 遍眞言曰 *唵摩賀麼攞跛囉訖囉二合摩*娑嚩二合 引 *賀 次應移印按彼臍中。想風輪其形圓黒色。誦 七遍眞言曰 *唵尾曩多引句攞曩那*娑嚩二合 引賀引 次應以大印加持彼兩脚。想迦樓羅誦眞言 曰 画像 *唵跛乞史二合囉*引惹跛那*娑嚩二合 引賀引 次應以大印誦甲冑眞言。加持童女遍身旋轉。眞言曰 画像 *唵迦嚩左摩部引多引地跛帝*娑嚩二合 引 賀 行者次應自身爲魔醯首羅天。三目頭冠瓔 珞莊嚴。頭冠上有佛半月。項上青。十八臂。 手持種種器仗。以龍爲紳線。角絡繋。又彼 塗血寫及。須臾頃觀自身已。次應以大印護 彼童女一百八命節。眞言曰 唵一蜜哩二合體尾野二合吒多二惹縛引 揄囉迦苫 画像 結其大印及誦眞言。遍身旋繞加持。則護一 百八種命節 次又以大印。眞言加持花香及閼伽等 次又以大印眞言結十方界。則應對此童女 前。誦魔醯首羅使者眞言曰 唎躋吒迦一麼多那引誐二尾灑娜跛拏三薩 摩那誐囉四尾訖囉二合摩五尾羅引薩誐底六 𠼝濟吒迦七布囉二合哩*跛引擔囕二合 八左羅 左*羅九左里左*里十*跛拏*跛拏十一*跛尼 *跛尼十二伴上爾伴爾十三羯恥羯恥十四阿 画像 尾捨阿尾捨十五𠼝躋吒迦十六嚕奴噌二合 抧孃二合跋野底*娑嚩二合 引賀十七 引 此眞言應誦七遍。則彼童女戰動。當知聖者 入身。則更彈指誦眞言。若無現驗。次誦摧 迫使者眞言曰 𠼝𠼝耶一摩魯呬多二引素囉素囉三引布 爾多賀那賀那四波囉二合憾麼二合 引那尼 五那覩嚕二合尼都嚕二合尼六謨尼謨尼七 伴上爾伴*上爾八羯恥羯恥九阿尾捨阿尾 *捨十𠼝躋吒迦十一嚕奴*噌二合枳孃二合跛 画像 野帝十二*娑嚩二合 引訶十三 引 誦此眞言必速應驗。問未來善惡一切災祥。 若不語或語遲。則結棒印 二手合掌。二無名指外支。二中指並立。二 頭指各鉤無名指頭。二大指各令押中交。誦 眞言曰 唵一母那誐二合囉二都嚕都嚕三娑嚩二合 引賀 引四 結此棒印。則語問種種事已。以大印眞言加 画像 持閼伽。三灑童女面。即結解。此使者眞言 先應誦一萬遍則法成。則見身來。須獻閼伽 乞願。願聖者一切處一切時使用皆辦。則隱 不現。已後欲使。塗一小壇著香花飮食。誦眞 言一百八遍。則現身。則言龍宮中取長年藥 如意寶珠。或使夜摩王處。延命増益壽命。或 使上取妙甘露。或使他國問其善惡。亦能助 軍陣摧破他敵。種種使用悉能成辦。此法一 切迦樓羅法中最殊勝。祕密難得。汝當揀擇 法器堪傳授者而傳與。非人器人即損他。已 画像 後此法不成。是故應極祕密勿妄傳受之。大 自在天迦樓羅陀羅尼曰 那謨婆伽嚩底一嚕馱囉野二瞋那劫波囉野 三薩嚩微那延迦囉*野四薩嚩羯摩莎馱那 *野五薩嚩嚩尸迦*羅拏野六薩嚩設覩嚕 二合尾那捨那野七唵八迦波羅質擔瞋那迦 波羅部擔九嚕訥嚕二合枳孃二合*跛野帝 十*娑嚩二合 引賀 此陀羅尼。調伏人取赤芭蕉葉畫彼人。心上 書名字。誦陀羅尼一百八遍。即埋牛糞中即 画像 調伏。欲令竪子對相憎。多羅葉畫彼男女形。 書名相背。取線纒。取鼠狼毛山鷄毛蛇退皮 燒熏。誦陀羅尼一百八遍。安劫波羅中。即於 屍林中埋著。便相憎。除却依舊。若令相憐者。 還於多羅葉上畫彼夫形。書名相合。取白線 繋。取雀兒毛蛇皮燒熏。誦陀羅尼一百八遍。 即相憐 又法欲令人相打。於大虫皮或於牛皮。畫二 人相把頭髻。書名著。取線纒著。於火上重。 画像 埋碓臼下。即得日日相打。除劫止 又法若欲調伏人者。取貝多葉上畫人形。書 名誦陀羅尼一百八遍。即於床下埋。即得調 伏 又法令尿血者。取多羅葉畫彼人。書姓名。取 釘誦陀羅尼一百八遍。釘上七七日。即得除 去 次説眼藥法。若調伏竪子者。取蛇頭竭羅安 善那青木香寫甲蜂二介。於黒月十四日 擣作抹。和肉點眼角。一切竪子隨逐。天上 画像 亦來非但人間也速疾立驗魔醯首羅天説迦婁羅阿尾奢法 画像 一卷

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