苦しみを滅ぼすための実践の道とは、以下の8つの要素からなる**「聖なる八支の道(八正道)」**であると定義されています。
目次
苦の消滅に至る道とは何か
① 正見(しょうけん:正しい見解)
これまで観察してきた「四聖諦」を正しく理解する智慧のことです。
- 苦に対する智(苦とは何かを知る)
- 苦の原因に対する智(渇愛が原因だと知る)
- 苦の消滅に対する智(渇愛を滅ぼすことだと知る)
- 苦の消滅に至る道に対する智(この八正道を知る)
② 正思惟(しょうしゆい:正しい思考・意志)
心を正しい方向に向けるための3つの思考です。
- 出離(しゅつり): 欲から離れようとする思考。
- 無瞋(むしん): 怒らず、慈しみを持とうとする思考。
- 無害(むがい): 自他を傷つけず、思いやりを持とうとする思考。
③ 正語(しょうご:正しい言葉)
言葉による4つの悪い行いを避けることです。
- 妄語(もうご): 嘘をつかない。
- 離間語(りかんご): 他人の仲違いをさせるような悪口を言わない。
- 粗悪語(そあくご): 乱暴な言葉、汚い言葉を使わない。
- 雑穢語(ぞうえご): 意味のない無駄話や噂話をしない。
④ 正業(しょうごう:正しい行い)
身体による3つの悪い行いを避けることです。
- 殺生(せっしょう): 生き物を殺さない。
- 不与取(ふよしゅ): 与えられていないものを取らない(盗まない)。
- 邪行(じゃぎょう): 愛欲における不適切な行為(不倫など)をしない。
⑤ 正命(しょうみょう:正しい生活)
不正な生計(邪命:人を騙したり、害したりして稼ぐこと)を捨て、道徳的に正しい職業や方法で生計を立てることです。
⑥ 正精進(しょうしょうじん:正しい努力)
心の状態をコントロールするための「4つの正しい努力(四正勤)」です。
- 未生の悪を防ぐ: まだ生じていない悪い心を、生じさせないように努力する。
- 既生の悪を断つ: すでに生じてしまった悪い心を、断ち切るように努力する。
- 未生の善を生む: まだ生じていない良い心を、生じさせるように努力する。
- 既生の善を育てる: すでに生じている良い心を、失わず、さらに増大させ完成させるように努力する。
⑦ 正念(しょうねん:正しい気づき)
これまでの『大念処経』で説かれてきた、以下の4つの領域に対する観察(四念処)を実践することです。熱心に、正しく気づき、世間の貪欲と憂いを取り除きます。
- 身(しん): 身体の動作や状態をありのままに観察する。
- 受(じゅ): 苦・楽・不苦不楽の感覚をありのままに観察する。
- 心(しん): 心の様々な状態(貪りや怒りの有無など)をありのままに観察する。
- 法(ほう): 真理・法則(五蓋、五蘊、十二処、七覚支、四聖諦)をありのままに観察する。
⑧ 正定(しょうじょう:正しい集中)
心が乱れず、深く集中した状態(四禅定)を修めることです。段階的に深まっていきます。
- 第一禅: 欲や悪い心から離れ、「大まかな思考(尋)」と「微細な思考(伺)」があり、離れたことによる「喜び」と「楽しさ」がある状態。
- 第二禅: 思考(尋・伺)が止んで心が統一され、集中から生じる「喜び」と「楽しさ」がある状態。
- 第三禅: 興奮を伴う「喜び」が静まり、落ち着き(捨)と正知を備え、「楽しさ」のみを経験している状態。
- 第四禅: 「苦」も「楽」も超え、喜びも憂いも消滅した、完全な落ち着きと純粋な気づき(捨による念の清浄)のみがある究極の集中状態。
まとめ. 四聖諦の観察の結論(定型句)
最後に、修行者がこの四聖諦(法)をどのように観察し、どのような境地に至るべきかがまとめられています。
- 客観的な観察: 法(真理)を、自分の内側、他者の外側、あるいはその両方において観察する。
- 生滅の観察: 真理が生じる性質、滅びる性質、またはその両方を観察する。
- 究極の境地: ただ「法(真理)があるだけだ」という純粋な気づきと知識のみが確立される。何ものにも頼らず、世間のいかなるもの(自分や心身の構成要素)にも執着しないで住する。
ここで「諦の品(四聖諦のセクション)」が終わりb「法随観(法の観察)」全体が完結します。
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四聖諦の観察
集聖諦(第二の真理:苦の原因は何か)
滅聖諦(第三の真理:苦の消滅とは何か)
道聖諦(第四の真理:苦の消滅に至る道とは何か)

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