SPEC-SILA-05:身の非行と口の非行──波羅提木叉威儀戒の内部構造

解脱道論 分別戒品第二 ── シンプル版 Batch 12

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目次

MODULE 1:四種の戒(第五軸)──四種戒の最終分類

核心:波羅提木叉威儀戒・命清浄戒・根威儀戒・縁修戒。この四種はBatch 12〜17の全体構造を規定する。

#種類対応Batch概要
1波羅提木叉威儀戒12〜13律の威儀。行と非行、行処と非行処
2命清浄戒14邪命を犯さない
3根威儀戒15六根を守護する
4縁修戒16〜17四事(衣食住薬)の修行

「復た次に、戒に四種有り。波羅提木叉威儀戒・命清淨戒・根威儀戒・縁修戒なり」

この四種は、Batch 11までの分類軸とは性質が異なる。Batch 10〜11は戒を分析する軸(二種・三種・四種の分類格子)であった。本バッチからの四種は戒を実行する領域──波羅提木叉(律儀)・命(生計)・根(感覚器官)・縁(生活必需品)──の規定である。分析から実装へ移行する。


MODULE 2:波羅提木叉威儀戒の定義

核心:波羅提木叉は「戒であり、起であり、初であり、行であり、護であり、威儀であり、脱であり、無縛であり、諸法の面であり、善法を正受するため」──9つの属性。

#属性意味
1律そのもの
2出発点
3最初にくるもの
4実践
5守り
6威儀整った振る舞い
7解放
8無縛縛りのないこと
9諸法の面すべての法の表面(入口)

「善法を正受せんが爲なり。波羅提木叉の義と名づく。身口業を越えず。是れ威儀なり」

波羅提木叉の義とは、善法を正受するためのもの。身口の業を越えないことが威儀。

「覆う所に住す」とは、波羅提木叉の威儀をもって成就し四威儀(行住坐臥)を護ること。


MODULE 3:非行の定義──邪命自活

核心:非行とは仏の制する邪命自活。七つの具体例が列挙される。

#非行の具体例原文
1杖竹を施す「或いは杖竹を施し」
2花葉果実を施す「或いは花葉果實を施し」
3楊枝澡浴を施す「或いは楊枝澡浴を施し」
4美悪を販弄する「或いは美惡を販弄し」
5調戯をする「或いは調戲を爲し」
6諂諛して自ら進む「或いは諂諛して自ら進み」
7恣に駆馳して遠く賓を招会す「或いは恣に驅馳して遠く賓を招會す」

「此の如き諸行、佛の制する所なり。邪命自活と謂う。此れを非行と爲す」

これらはすべて、利を得るために他者との関係を操作する行為。物を贈り、媚びへつらい、遠方の有力者を招く。Batch 14の邪命(命清浄戒)の前身がここにある。


MODULE 4:二種の非行──身の非行と口の非行

核心:非行は身と口に分かれる。身の非行は身体を使った社会的不適切行為。

「復た次に、二種の非行有り。身の非行・口の非行なり」


MODULE 5:身の非行──全列挙

核心:身の非行は僧団の中での具体的な振る舞いとして列挙される。上座への不敬、自己顕示、女性への不適切な接触に至るまで。

#身の非行原文カテゴリ
1陵慢の心をもって僧中に往至す「陵慢の心を以て僧中に往至し」傲慢
2大徳を排触す「大徳を排觸し」上座への不敬
3叨佷として自ら前す「叨佷として自ら前す」自己顕示
4猗り行きて先に上位に坐す「或いは猗り或いは行きて先に上位に坐し」序列の破壊
5大を下に推す「大を下に推す」序列の破壊
6坐し猗りて排調す「或いは坐し猗りて排調す」横柄な態度
7肩を拍ち笑語す「或いは肩を拍ち笑語す」馴れ馴れしさ
8上座は徒跣なるに自ら革屣を著く「上座は徒跣なるに、自ら革屣を著く」上座への不敬
9耆徳は下路なるに己は高陌を行く「耆徳は下路なるに、己は高陌を行く」上座への不敬
10衆の異縁をもって相い軽悩す「衆の異縁を以ての故に相い輕惱す」軽蔑
11勝を少に待し、劣を長に与う「或いは勝を以て少に待し、劣を推して長に與う」不公正な分配
12浴室にて薪木を焼き門戸を関閉するに諮問なし「或いは浴室に於いて諸の薪木を燒き、門戸を關閉するに皆諮問すること無し」共有資源の私物化
13水辺に詣りて自ら先に入る「或いは水邊に詣りて輒ち自ら先に入り」序列の無視
14身を嬌にし搏を撃ち鄙相を現ず「身を嬌にし搏を撃ち諸の鄙相を現ず」不適切な身体表現
15他の舎に入りて前後を超越す「若し他の舍に入りて前後を超越し」礼節の欠如
16行坐次なし「行坐次無し」秩序の無視
17屏処にて女人・僮女と戯弄す「或いは屏處に在りて女人及び諸の僮女と戲弄し」不適切な異性関係
18其の首を摩触す「其の首を摩觸す」不適切な身体接触

「是の如き等の過、身の非行と謂う」

身の非行のカテゴリ分布

カテゴリ該当番号
傲慢・自己顕示1, 32
上座への不敬2, 8, 93
序列の破壊・無視4, 5, 13, 164
横柄・馴れ馴れしさ6, 72
軽蔑・不公正10, 112
共有資源の私物化121
不適切な身体表現141
礼節の欠如151
不適切な異性関係17, 182

MODULE 6:波羅提木叉威儀戒の構造──行と非行、行処と非行処

核心:「衆行具足」は行と非行の区別、行処と非行処の区別を含む。本バッチは非行と身の非行を扱い、Batch 13で口の非行・行・行処を扱う。

要素内容対応Batch
非行(邪命自活)利を得るための七つの操作12
身の非行僧団内の18の不適切行為12
口の非行次バッチ13
非行の反転+具体的な正行13
非行処行くべきでない場所13
行処(依・守護・繋縛)行くべき場所13

三層クロスリファレンス

解脱道論(本バッチ)大安般守意経Kernel 4.x
MODULE 1:四種戒(波羅提木叉・命・根・縁修)MODULE 1:安般守意の四義(安・般・守・意)Vol.0:シリーズ全体の四層構成
MODULE 2:波羅提木叉の9属性MODULE 2:六事の定義(各段階の属性列挙)Vol.1:出離プロトコルの属性定義
MODULE 3:七つの非行=邪命自活MODULE 11:止悪一法プロセス(悪の具体的列挙)Vol.2:18のノイズ除去(ノイズの具体的列挙)
MODULE 5:身の非行18項MODULE 4:数息のエラー定義(具体的エラーパターン)Vol.2:ノイズ源のカタログ
MODULE 6:行と非行の構造MODULE 10:止観デュアルプロトコル(正と非の二重構造)Vol.1:障害と出離の対構造

STATUS / NOTE

  • 本バッチから分別戒品は「分析」から「実装」に移行する。Batch 10〜11の分類格子は戒を22軸で分析した。本バッチからは戒を四つの領域(波羅提木叉・命・根・縁修)で実装する。
  • 四種戒の第五軸(波羅提木叉・命・根・縁修)は、Batch 12〜17の全体構造を規定する。この四つが以後6バッチの骨格。
  • 身の非行18項は、僧団の社会的秩序の記述である。序列の破壊(4項)が最多。仏教の僧団は序列が厳密であり、序列の無視はすなわち僧団の破壊。
  • Batch 08で述べた戒の相の三破法(波羅提木叉法の破壊・縁法の破壊・根法の破壊)と、本バッチの四種戒(波羅提木叉・命・根・縁修)は対応する。破法の三種が、戒の四種として実装仕様に展開されている。
  • 身の非行の最後の二項(女人との戯弄・首の摩触)は、Batch 09の34障害の「親近女人」(#31)の具体化。

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