Document ID: SPEC-DHUTANGA-08 Source: 解脱道論 巻第二 頭陀品第三(梁・僧伽婆羅訳) Category: 02. Kernel Source Batch: 08 / 29 — 方便(13パラメータの例外処理)
目次
MODULE 1:方便とは何か
「方便」=特定の条件下でパラメータの「断ず」を一時的に解除しても、パラメータ自体を失わない例外処理。
全13パラメータのうち、方便が存在するものと存在しないものがある。
MODULE 2:方便の有無一覧
| # | パラメータ | 方便 | 備考 |
|---|
| 01 | 糞掃衣 | 有り | 居士の施の衣を方便で受けても失わず |
| 02 | 三衣 | 有り | 特定条件の長衣を方便で保持しても失わず |
| 03 | 乞食 | 有り | 僧次食等を方便で受けても失わず |
| 04 | 次第乞食 | 有り | 危険・不適切な家を方便で越えても失わず |
| 05 | 一坐食 | 有り | 不可抗力で起立しても、再び食して失わず |
| 06 | 節量食 | 無し | 方便なし |
| 07 | 時後不食 | 無し | 方便なし |
| 08 | 無事処坐 | 有り | 僧団の用事で聚落に住しても失わず |
| 09 | 樹下坐 | 有り | 雨の時に覆処に入っても、明相に還れば失わず |
| 10 | 露地坐 | 有り | 樹下と同じ |
| 11 | 塚間坐 | 有り | 樹下と同じ |
| 12 | 遇得処坐 | 有り | 樹下と同じ |
| 13 | 常坐不臥 | 無し | 方便なし(ただし一説あり) |
方便無し: 節量食・時後不食・常坐不臥の三つ。
MODULE 3:糞掃衣の方便
| 項目 | 内容 |
|---|
| 例外条件 | 居士の施の衣(芻麻・古貝・憍奢耶・欽婆羅等)を方便で受ける |
| 結果 | 納衣を失わず |
MODULE 4:三衣の方便
| 項目 | 内容 |
|---|
| 例外条件① | 長衣を畜え、已に十日を過ぐ |
| 例外条件② | 月望の衣有り |
| 例外条件③ | 功徳の衣有り |
| 例外条件④ | 臥具を護り、敷具・覆瘡の衣・手巾・雨浴の衣の為に受持す |
| 追加条件 | 受持せず、浄施せず |
| 結果 | 方便を以てすとも三衣を失わず |
MODULE 5:乞食の方便
| 例外として受けてよい食 | 定義 |
|---|
| 僧次の食 | 僧団の順番で回ってくる食事 |
| 常住の食 | 寺院に常時供えられる食事 |
| 行籌の食 | 籤で当たった食事 |
| 十五日の食 | 半月ごとの食事 |
| 布薩の食 | 布薩の日の食事 |
| 衆食 | 衆僧の食事 |
| 寺食 | 寺院での食事 |
| 項目 | 内容 |
|---|
| 結果 | 方便を以て受くとも乞食を失わず |
| 注意 | 「若し此の過を見ば亦た応に捨離すべし」 |
注意の一文が重要。 方便で受けてよいが、そこに過患を見たら捨離すべし。例外処理は許可であって推奨ではない。
MODULE 6:次第乞食の方便
| 越えてよい条件 | 内容 |
|---|
| 象馬等が門で鬪う | 危険な状況 |
| 羞ずべき鄙しむべき処 | 恥ずかしい・卑しい場所 |
| 旃陀羅の覆鉢 | 旃陀羅(不可触民)が鉢を覆っている家 |
| 学家 | 学家(修行中の在家者の家) |
| 和上・闍梨に随う | 師匠に従って移動する場合 |
| 客行の比丘に随う | 客比丘に従う場合 |
MODULE 7:一坐食の方便
| 食事中に起立してよい条件 | 内容 |
|---|
| 象が来る | 不可抗力 |
| 馬が来る | 不可抗力 |
| 牛が来る | 不可抗力 |
| 蛇が来る | 不可抗力 |
| 雨が降る | 不可抗力 |
| 和上が来る | 師匠への礼 |
| 闍梨が来る | 師匠への礼 |
| 客比丘が来る | 客への礼 |
| 項目 | 内容 |
|---|
| 手順 | 方便して起つ。起ち已りて更に食す |
| 結果 | 一坐を失わず |
MODULE 8:方便無しの三パラメータ
| パラメータ | 原文 |
|---|
| 節量食 | 方便無し |
| 時後不食 | 方便無し |
| 常坐不臥 | 方便無し |
原文: 「若し節量食及び時後食は方便無し。」「余の住処の住すべきと常坐不臥とは方便無し。」
この三つには例外が一切存在しない。
| パラメータ | なぜ方便がないか |
|---|
| 節量食 | 「自分で量を計る」ことの例外は存在しない。量を計らなければ節量食ではない |
| 時後不食 | 「食後に食べない」ことの例外は存在しない。食べれば時後不食ではない |
| 常坐不臥 | 「横にならない」ことの例外は存在しない。横になれば常坐不臥ではない |
MODULE 9:常坐不臥の別説
| 項目 | 内容 |
|---|
| 原文 | 「復た一説有り。若し鼻に灌ぐ時、方便を作すを得。常坐を失わず」 |
| 条件 | 鼻に水を灌ぐ(鼻洗浄の)時 |
| 結果 | 方便を作しても常坐を失わず |
ウパティッサは「方便無し」と書いた直後に「復た一説有り」と別の伝承を併記した。自分の見解と異なる説を削除せず、そのまま残している。
MODULE 10:無事処の方便
| 聚落に住してよい条件 | 内容 |
|---|
| 受戒 | 戒を受ける儀式 |
| 懺罪 | 罪を懺悔する |
| 法を問う | 法について質問する |
| 布薩 | 布薩の行事 |
| 自恣 | 自恣の行事 |
| 自病 | 自分が病気 |
| 看疾 | 他者の病気を看る |
| 経の疑処を問う | 経典の疑問箇所を問う |
MODULE 11:住環境四パラメータの共通方便
| 項目 | 内容 |
|---|
| 対象 | 樹下・露地・塚間・遇得処 |
| 共通条件 | 雨の時に覆処に入る |
| 復帰条件 | 明相既に現ぜば還る |
| 結果 | 失わず |
| 原文 | 「此れ等の方便も、亦た復た是の如し」 |
MODULE 12:方便の構造まとめ
| 分類 | パラメータ | 方便の性格 |
|---|
| 衣の方便 | 糞掃衣・三衣 | 素材の種類に関する例外 |
| 食の方便(有) | 乞食 | 僧団制度に関する例外 |
| 食の方便(有) | 次第乞食 | 安全・礼節に関する例外 |
| 食の方便(有) | 一坐食 | 不可抗力に関する例外 |
| 食の方便(無) | 節量食・時後不食 | 例外なし |
| 住の方便 | 無事処 | 僧団義務に関する例外 |
| 住の方便 | 樹下〜遇得処 | 天候に関する例外 |
| 精進の方便 | 常坐不臥 | 例外なし(別説あり) |
三層クロスリファレンス
| 本バッチの項目 | 大安般守意経 | Kernel 4.x(無碍解道論) |
|---|
| 方便有り(条件付き解除) | MODULE 6:神足仕様「力を尽くさざれば得る」(自在の前提) | Vol.2:18のノイズ除去(過剰精進もエラー) |
| 方便無し(節量食・時後不食) | MODULE 4:数息の快息=最適値に例外なし | Vol.5:喜楽管理(エネルギーの過不足は常にエラー) |
| 方便無し(常坐不臥) | MODULE 10:止観「悪未だ尽きざれば道を見ず」(前提条件に例外なし) | Vol.1:障害検知(昏沈睡眠の除去に例外なし) |
| 「過を見ば捨離すべし」(乞食の注意) | MODULE 11:止悪一法「悪を知る→意に著せざる」 | Vol.6:離欲(依存を見たら削除する) |
| 別説の併記 | ─ | ─ |
STATUS: Kernel Source / 実践者参照用 NOTE: 方便は「許可」であって「推奨」ではない。乞食の方便に付された「若し此の過を見ば亦た応に捨離すべし」が全方便に通底する姿勢。方便無しの三パラメータ(節量食・時後不食・常坐不臥)は、その性質上、例外を設けた瞬間にパラメータそのものが消滅する。
前バッチ → SPEC-DHUTANGA-07(常坐不臥) 次バッチ → SPEC-DHUTANGA-09(13→8→3 スキーマ圧縮)
コメント