SPEC-SILA-03:性戒と制戒──二種の戒の全展開

解脱道論 分別戒品第二 ── シンプル版 Batch 10

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目次

MODULE 1:性戒と制戒

核心:性戒は「本来なすべきでないこと」の禁止。制戒は「本来なしうること」の禁止。前者は信と精進で具足し、後者は信と念と持で具足する。

種類定義具足の方法原文
性戒身口の所行、仏が断じて行ぜず信・精進「身口の所行、佛斷じて行ぜず」
制戒身口行ずべきも、仏が断じて行ぜず信・念・持「身口行ず可きも、佛斷じて行ぜず」

性戒の例:殺生・偸盗・邪淫・妄語──これらは仏の制定がなくても本来悪である。 制戒の例:午後の食事の禁止、金銀の受領禁止──これらは仏の制定がなければ悪ではない。


MODULE 2:退戒と得戒

核心:退戒は非戒を滅す。得戒は善法を得る。非戒を断つことと正戒を得ることは、光が影を断つのと同じ。

種類定義効果原文
退戒非戒を滅す悪趣を離れる「非戒を斷つを以て諸の惡趣を離る」
得戒衆善法を得る善道に趣く「正戒を得るを以て能く善道に趣く」

「諸の非戒を除くこと、光影を斷つが如し」

非戒を断つことで住分が成就する。光が影を断つように、一方を除けば他方が現れる。Batch 09の「反転操作」(障害→因)と同型。


MODULE 3:世戒と出世戒

核心:世戒の成就は具足をもたらし、出世戒の成就は解脱をもたらす。

種類定義成就の結果原文
出世戒聖道果の得る所の戒解脱「出世戒を以て成就するが故に解脱有り」
世戒それ以外具足「世戒を以て成就するが故に具足有り」

MODULE 4:有量と無量

核心:具足せざる戒は有量。仏の断ぜし所を具足すれば無量。

種類定義原文
有量具足せざる戒「具足せざる戒、是れを有量と名づく」
無量具足の戒。仏の断ぜし所による「若し具足の戒、佛の斷ぜし所を以てす。是れを無量と名づく」

MODULE 5:有辺と無辺

核心:有辺の戒は、利養・称誉・身命を限界点として持つ。無辺の戒は、犯心すら起こさない。

種類条件限界点原文
有辺世の利・勝・親友・身・命のために行じ受ける利養・称誉・身・命「彼の戒は利養を邊と爲し、稱譽を邊と爲し…」
無辺出の利のために如法に受け、犯心を起こさないなし「犯心を起こさず。何ぞ況んや故に犯さんや」

「犯心を起こさず。何ぞ況んや故に犯さんや」──犯そうという心すら起こさない。まして故意に犯すことなどありえない。


MODULE 6:有依と無依

核心:有依の戒は愛・見・慢に依る。無依の戒は解脱の資用を成就する。

種類依る対象原文
有依(愛に依る)相有る戒は愛に依る「相有る戒は愛に依る」
有依(見に依る)戒盗相応の戒は見に依る「戒盜相應の戒は見に依る」
有依(慢に依る)自ら誉め他を毀る相応の戒は慢に依る「自ら譽め他を毀る相應の戒は慢に依る」
無依解脱の資用を成就する「若し解脱の資用を成就すれば、是れ無依の戒なり」

「若し有依の戒は慧人の楽しむ所に非ず。若し無依の戒は是れ慧人の楽しむ所なり」

「戒盗」とは、他人の戒を自分のものとして誇示すること。戒を盗む──見(見解への執着)に依る戒である。


MODULE 7:梵行の初と学の微細戒

核心:正業・正語・正命の摂する戒が「梵行の初」。余の学戒は「軽戒」。声聞は堅戒上戒を犯せば起きられないが、軽戒には犯と起がある。

種類内容原文
梵行の初正業・正語・正命の摂する戒「正業・正語・正命の攝する所の戒」
学の微細戒(軽戒)余の学戒「餘の學戒有り、此れを輕戒と謂う」

「聲聞、梵行の初の堅戒上戒に於いては、此の輕戒に於いて犯を得、起を得。何を以ての故に。佛此れ解脱を障うと説きたまわざればなり」

軽戒を犯しても解脱の障害にはならない──仏がそう説かなかったからである。ただし堅戒上戒を犯せば、話は別。


MODULE 8:有心相応と無心相応

核心:初めて梵行を学ぶ戒は心と相応する。余の軽戒は心と相応しない。

種類対象原文
有心相応初めて梵行を学ぶ戒「謂く初めて梵行を學ぶなり」
無心相応余の軽戒「謂く餘の輕戒なり」

MODULE 9:無犯戒と清浄戒

核心:声聞の戒は「無犯」。仏と縁覚の戒は「清浄」。犯さないことと清浄であることは異なる。

種類対象原文
無犯戒声聞の戒「謂く聲聞の戒なり」
清浄戒仏・縁覚の戒「佛及び縁覺の戒なり」

犯さないこと(無犯)は、努力によって犯を避けている状態。清浄は、もはや犯す可能性そのものがない状態。


MODULE 10:時分戒と尽形戒

核心:時分戒は一時的に受ける。尽形戒は寿命を捨てるまで。果報の時限が異なる。

種類定義果報原文
時分戒少時暫く受けて形命に倶せず果報に時限あり「少時暫く受けて形命に倶せず」
尽形戒師より始めて誓い、寿を捨つるに至る果報に時限なし「師より始めて誓い、乃ち壽を捨つるに至る」

二種の戒の全軸一覧

#第一種第二種分類原理
1性質性戒制戒本来の善悪 vs 仏の制定
2方向退戒(非戒を滅す)得戒(善法を得る)除去 vs 獲得
3領域世戒出世戒世間 vs 出世間
4有量無量不完全 vs 完全
5有辺無辺限界あり vs 限界なし
6有依無依愛見慢に依る vs 解脱に資する
7重さ梵行の初(堅戒)学の微細戒(軽戒)不可犯 vs 犯と起あり
8心との関係有心相応無心相応心が伴う vs 心が伴わない
9完成度無犯戒清浄戒犯さない vs 清浄
10時間時分戒尽形戒一時的 vs 終生

三層クロスリファレンス

解脱道論(本バッチ)大安般守意経Kernel 4.x
MODULE 1:性戒と制戒(本来の善悪 vs 制定)MODULE 4:数息のパラメータ(自然な呼吸 vs 制御された呼吸)Vol.2:18のノイズ除去(自生ノイズ vs 条件ノイズ)
MODULE 2:退戒と得戒(除去 vs 獲得)MODULE 11:止悪一法プロセス(悪の停止=善の獲得)Vol.1:障害検知と出離(検知=除去→出離=獲得)
MODULE 5:有辺と無辺(限界点の有無)MODULE 5:止の4フェーズ(段階的深化→限界の超越)Vol.6:カーネル直接操作(限界を超える操作)
MODULE 6:有依と無依(愛見慢 vs 解脱)MODULE 12:四諦実行コマンド(集の依→滅の無依)Vol.7:滅・捨断・最終シーケンス(依の消滅)
MODULE 9:無犯と清浄(努力 vs 自然)MODULE 6:観還浄(浄=自然な清浄)Vol.8:200+の智による完全性証明

STATUS / NOTE

  • 二種の戒が10軸で展開される。これは第二巻 Batch 16(分別定品)の定の二分類×3軸と同型の展開パターンだが、戒の方が軸数が多い。戒の分類の精密さは、戒が修行の基盤であることの反映。
  • 有辺と無辺の区別は座る人間にとって最も実践的。「身のため、命のために戒を持つ」のは有辺。「犯心を起こさない」のが無辺。座りの質は、戒の辺の有無に直結する。
  • 有依と無依──愛に依る戒、見に依る戒、慢に依る戒。「戒盗」(他人の戒を自分のものとする)は見に依る戒。座りの功徳を自慢するのは慢に依る戒。いずれも慧人の楽しむ所ではない。
  • 無犯と清浄の差──声聞は犯さない。仏と縁覚は清浄である。犯さない努力と、犯す可能性の消滅は、異なるレベル。

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