SPEC-SILA-04:戒の重層構造──三種と四種の全展開

解脱道論 分別戒品第二 ── シンプル版 Batch 11

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目次

MODULE 1:三種の戒(第一軸)──止悪・受・断

核心:止悪不犯は受を受けなくても心に犯を生じない。受不犯は受けてから犯さない。断不犯は聖道で悪因を断つ。三段階は凡夫→有学→聖人の弧に対応する。

種類定義対応する段階原文
止悪不犯未だ受を受けずとも、非なる処に心に犯を生ぜず自然な善性「未だ受を受けざると雖も、所行の處に非ざれば心に犯を生ぜず」
受不犯受を受けてより終に復た犯さず持戒者「受を受けてより已に終に復た犯さず」
断不犯聖人、聖道をもって諸の悪因を断ず聖者「聖人、聖道を以て諸の惡因を斷ず」

MODULE 2:三種の戒(第二軸)──触・不触・猗

核心:触戒は有為の相に愛を見る凡夫の善戒。不触戒は道に入る資用。猗戒は阿羅漢の戒。

種類定義対応する段階原文
触戒有為の相、初めて愛を見る。凡夫の善戒凡夫「有爲の相、初めて愛を見るを觸と爲す。是れ凡夫の善戒なり」
不触戒道に入る資用有学「資用して道に入るは、是れを無觸戒と謂う」
猗戒阿羅漢の戒無学「謂く阿羅漢の戒なり」

「触」とは、有為の相に触れて愛(執着)が生じること。凡夫は善戒を持っていても、その戒自体に触れ、愛着する。不触は道に入る道具として戒を使う。猗は安息──阿羅漢にとって戒は努力ではなく休息。


MODULE 3:三種の戒(第三軸)──依世・依身・依法

核心:何を恐れて戒を持つかが異なる。世間を恐れるか、身命を恐れるか、正法を恐れるか。

種類恐れる対象行為原文
依世戒世の意世間の意見を将護し悪法を除く「世の意を將護し諸の惡法を除く」
依身戒身命身命を将護し悪法を除く「身命を將護し諸の惡法を除く」
依法戒正法正法を将護し不善を除く「正法を將護し諸の不善を除く」

MODULE 4:三種の戒(第四軸)──所願不等・所願等・無所願

核心:戒を受ける動機の分類。他を悩ますか、自利利他か、後悔なき利他か。

種類動機原文
所願不等他を悩まして戒を受く「他を惱まして戒を受く」
所願等現有の楽と未来の解脱楽のため「現有の樂及び未來の解脱樂の爲にす」
無所願悔いず、他を饒益するため「戒を受けて悔いず、他を饒益せんが爲なり」

MODULE 5:三種の戒(第五軸)──清浄・不清浄・有疑

核心:清浄は「犯さない」か「犯して悔いる」。不清浄は「故に犯す」か「犯して悔いず」。有疑は分別できない三つの場合。

清浄と不清浄

種類二因縁原文
清浄戒①犯さず ②犯して已に能く悔ゆ「一には犯さず。二には犯して已に能く悔ゆ」
不清浄戒①自ら故に犯す ②犯して悔いず「一には自ら故に犯す。二には犯して悔いず」

有疑の三因

#原文
1処を分別せず「處を分別せざるを以てなり」
2犯を分別せず「犯を分別せず」
3不正行を分別せず「不正行を分別せず」

「若し坐禅の人、戒清浄ならざれば、深く慚悔を生じ清浄楽を成ず。又疑惑有れば、現に罪を知らしめ、安楽を成ることを得」

座禅の人への直接的な指示:戒が清浄でなければ深く慚悔せよ。疑惑があれば現に罪を知らしめよ。


MODULE 6:三種の戒(第六軸)──学・無学・非学非無学

核心:七学人の戒が学。阿羅漢の戒が無学。凡夫の戒が非学非無学。

種類対象原文
七学人(須陀洹〜阿羅漢向)「七學人の戒なり」
無学阿羅漢「阿羅漢の戒なり」
非学非無学凡夫「凡夫人の戒なり」

MODULE 7:三種の戒(第七軸)──畏・憂・癡

核心:畏戒は罪を畏れて悪をなさず。憂戒は離別の憂いから悪をなさず。癡戒は牛戒狗戒。癡戒は成ずれば牛狗、成ぜざれば地獄。

種類動機結果原文
畏戒罪を畏れる悪をなさず「人有りて罪を畏れ敢えて惡を爲さず」
憂戒親友を離れる憂い悪をなさず「親友を離るるを念じて暫く愁苦を生ず」
癡戒無知成ずれば牛狗、成ぜざれば地獄「人有りて牛戒狗戒を受く」

「癡戒若し成ずれば則ち牛狗と爲る。若し復た成ぜざれば則ち地獄に墮す」

癡戒の帰結は二つとも悪。成功しても牛か犬になり、失敗すれば地獄に堕ちる。


MODULE 8:三種の戒(第八軸)──下・中・上

核心:下戒は人の具足、中戒は天の具足、上戒は解脱。煩悩の粗さと知足の有無で分かれる。

種類触する煩悩知足成満の結果原文
上煩悩・上上煩悩・大煩悩知足せず人の具足「下戒成滿すれば人の具足を令む」
細煩悩知足あり天の具足「中戒成滿すれば天の具足を令む」
触する所なし知足あり解脱「上戒成滿すれば解脱を得しむ」

MODULE 9:四種の戒(第一軸)──退分・住分・勝分・達分

核心:四分は戒・定・放逸・寂見の組み合わせで決まる。達分のみ寂見を生じる。

種類条件原文
退分障害を除かず、精進を離れ、知りて故に犯し、犯して覆蔵す「道の障礙を除かず。精進を離れたる人なり。知りて而して故に犯す。犯して已に覆藏す」
住分戒に成就して放逸を起こさず。寂見を生ぜず「戒に於いて成就して放逸を起こさず。寂見を生ぜず、住分を成就す」
勝分戒定に成満して放逸を起こさず。寂見を生ぜず「戒定に於いて成滿して放逸を起こさず。寂見を生ぜず、勝分を成就す」
達分戒定に成満して放逸を起こさず。寂見を生ず「戒定に於いて成滿して放逸を起こさず。寂見を生ずるを以て達分を成就す」

住分→勝分の差は「戒のみ」から「戒定」へ。勝分→達分の差は「寂見を生ぜず」から「寂見を生ず」へ。達分のみが寂見(涅槃への洞察)を含む。


MODULE 10:四種の戒(第二軸)──比丘・比丘尼・不具足・白衣

核心:対象者による戒の分類。波羅提木叉の威儀が比丘・比丘尼。十戒が沙弥等。五戒・八戒が在家。

種類対象戒の内容
比丘戒比丘波羅提木叉の威儀
比丘尼戒比丘尼波羅提木叉の威儀
不具足戒沙弥・沙弥尼・式叉摩尼十戒
白衣戒優婆塞・優婆夷五戒・八戒

MODULE 11:四種の戒(第三軸)──性・行・法志・初因

核心:性戒は自然発生。行戒は社会的慣習。法志戒は菩薩の入胎の戒。初因戒は菩薩と摩訶迦葉の戒。

種類定義原文
性戒欝単越の戒(北倶盧洲の自然戒)「欝單越の戒、此れを性戒と謂う」
行戒姓族・国土・外道等の法「姓族・國土・外道等の法の如し」
法志戒菩薩の入胎の戒「菩薩の入胎の戒」
初因戒菩薩及び摩訶迦葉の戒「菩薩及び摩訶迦葉の戒」

MODULE 12:四種の戒(第四軸)──戒・戒集・戒滅・滅道具足戒

核心:戒に四諦を適用する。戒→戒集→戒滅→滅道具足。滅道具足戒は四正勤である。

種類定義原文
善戒と不善戒の二種「善戒・不善戒なり」
戒集善心は善戒を集め、不善心は不善戒を集む「善心は善戒を集む。不善心は不善戒を集む」
戒滅善戒を得て不善戒を滅す。阿羅漢を得て善戒を滅す「善戒を得て不善戒を滅す。阿羅漢を得て善戒を滅す」
滅道具足戒四正勤「謂く四正勤なり」

「阿羅漢を得て善戒を滅す」──阿羅漢は善戒すらも滅する。Batch 09の無記戒(過患なく果報もない)と接続する。阿羅漢の戒は善でも不善でもない。

「是の如く四法を分別し曉了す。是れを精進と謂い、眞の持戒に非ず。是れを正勤と名づく」──四諦の理解は精進であり、真の持戒ではない。正勤と名づけられる。


三種・四種の全軸一覧

三種の戒(8軸)

#第一種第二種第三種
1不犯の段階止悪不犯受不犯断不犯
2執着の段階触戒不触戒猗戒
3恐れの対象依世戒依身戒依法戒
4願の質所願不等所願等無所願
5清浄度清浄戒不清浄戒有疑戒
6学の段階無学非学非無学
7動機畏戒憂戒癡戒
8煩悩の程度

四種の戒(4軸)

#第一種第二種第三種第四種
1進退退分住分勝分達分
2対象者比丘比丘尼不具足白衣
3起源性戒行戒法志戒初因戒
4四諦適用戒集戒滅滅道具足戒

三層クロスリファレンス

解脱道論(本バッチ)大安般守意経Kernel 4.x
MODULE 1:止悪→受→断(三段階の不犯)MODULE 2:数→随→止(三段階の制御深化)Vol.1→Vol.2→Vol.3:障害検知→ノイズ除去→因果トレース
MODULE 2:触→不触→猗(執着→道具→安息)MODULE 6:観→還→浄(観察→還帰→清浄)Vol.5→Vol.6→Vol.7:喜楽管理→カーネル操作→最終シーケンス
MODULE 5:清浄・不清浄・有疑MODULE 4:数息のエラー定義(正確・不正確・不明)Vol.2:ノイズ除去(ノイズの分類と対処)
MODULE 9:退分→住分→勝分→達分MODULE 13:三十七道品アップデートフェーズ(段階的更新)Vol.4→Vol.8:リソースマウント→完全性証明
MODULE 12:戒→戒集→戒滅→滅道具足MODULE 12:四諦実行コマンド(苦→集→滅→道)Vol.7:滅・捨断(四諦の直接実行)

STATUS / NOTE

  • 三種の戒8軸+四種の戒4軸=12軸。Batch 10の二種10軸と合わせると22軸。ウパティッサは戒を22軸の分類格子で完全に定位している。
  • MODULE 5「清浄・不清浄・有疑」は座禅者への直接指示を含む唯一のMODULE。「坐禅の人、戒清浄ならざれば深く慚悔を生ぜよ」。
  • MODULE 9「退分→達分」は、因縁品の「戒多修→須陀洹、戒定多修→阿那含、三種満→阿羅漢」と接続する。達分のみが寂見を含む。
  • MODULE 12「阿羅漢を得て善戒を滅す」──これは善戒の超越。善もまた超える。第二巻 Batch 20「五つの充満と帰結」で「生死を伏せず」(定だけでは足りない)と述べられたのと対照的に、ここでは「善戒もまた滅す」と述べる。善を超えることが、戒の四諦の帰結。

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