小品般若経 巻第四④ 已に曾て諸仏を供養せり 無料

目次
今回の位置/語注/書き下し/現代語の要約/ポイント 已に曾て供養せり/つまずきやすい所/次回

今回の位置

③は、行ぜざるが即ち行ず、から入り、無転無還で閉じた。歎淨品は、波羅蜜の名を並べて終わっている。

④は、摩訶般若波羅蜜不可思議品第十の入口である。帝釈の念。聞き得る者は、過去に既に供養している。不驚不怖。舎利弗が信解と拒逆を見る。帝釈が返し、舎利弗が印す。帝釈が住と習を問い、仏が返す。住せざるが即ち習うなり。舎利弗が阿毘跋致の前で説くべしと言い、帝釈が未受記の咎を問う。舎利弗が、久発の大乗心へ戻す。仏が印して、ここで切る。

譬喩には入らない。聞を福の商品にしない。不可思議を神秘の商品にしない。拒逆を脅しに売らない。浄を新しい所有にしない。定義の注釈からは入らない。

読む範囲は、不可思議品第十の冒頭、「爾時釋提桓因作是念」から、「若未受記菩薩得聞深般若波羅蜜、當知是菩薩久發大乘心」まで。

語注

已曾供養(いそうくよう) — 已に曾て諸仏を供養せり。聞いた功徳が今付く、ではありません。過去の本相です。

不驚不怖(ふきょうふふ) — 驚かず、怖じず。過去の諸仏の所で深般若を聞いた、と続きます。勇気の所有にしません。

阿毘跋致(あびばっち) — 不退転。能く信解すれば、是の菩薩は阿毘跋致の如し、と置かれます。位の商品にしません。

信解(しんげ) — 深く信じて解す。過去世に久しく行ぜざれば、信解し能わず、と返ります。

誹謗拒逆(ひぼうきょぎゃく) — そしり、拒み、逆らう。久已に誹謗拒逆せり。巻第三の拒逆の口に触れます。罰の段にしません。

清浄心(しょうじょうしん) — 清浄の心無し、と拒逆の側に出ます。①の浄、③の清浄を、ここで深い心として持ちません。

薩婆若智(さつばにゃち) — 一切智の智。般若を敬礼するは、即ち薩婆若智を敬礼する。般若から薩婆若智が生じ、薩婆若智から還って般若が生ずる、と続きます。般若の外に智の山を立てません。

住(じゅう)/習(しゅう) — 住せざるが即ち習う。習わざるが即ち住せざる。③の不行即行の側です。

無量無底(むりょうむてい) — 量無く、底無し。舎利弗の讃えです。深さを測って持つ語ではありません。

未受記(みじゅき) — まだ記を受けていない菩薩。聞く咎では無く、久しく大乗心を発せり、と印されます。

受記(じゅき) — 阿耨多羅三藐三菩提の記。記を山に積みません。

書き下し

爾の時、釋提桓因、是の念を作さく、「若し人、般若波羅蜜を聞くことを得る者は、当に知るべし、是の人は已に曾て諸仏を供養せり。何に況んや受持読誦し、所説の如く学び、所説の如く行ぜんをや。若し人、深般若波羅蜜を説くを聞き、受持読誦し、所説の如く行ぜば、当に知るべし、是の人は已に曾て多く仏を供養し、広く其の義を問えり。過去の諸仏に於て深般若波羅蜜を聞き、驚かず怖じず」と。

爾の時、舎利弗、仏に白して言わく、「世尊、若し菩薩摩訶薩、能く深般若波羅蜜を信解せば、当に知るべし、是の菩薩は阿毘跋致の如し。何を以ての故に。世尊、若し人、過去世に於て久しく深般若波羅蜜を行ぜざれば、則ち信解すること能わず。世尊、若し般若波羅蜜を誹謗拒逆する者有らば、当に知るべし、是の人は久已に般若波羅蜜を誹謗拒逆せり。何を以ての故に。是の人、深般若波羅蜜に於て、信心有ること無く、清浄心無く、また諸仏及び諸仏弟子に所疑を問わざればなり」と。

爾の時、釋提桓因、舎利弗に語らく、「是の般若波羅蜜は甚深なり。若し久しく菩薩道を行ぜざれば、信解し能わざるは、何の怪しむべきことか有らん。若し人、般若波羅蜜を敬礼せば、即ち是れ薩婆若智を敬礼するなり」と。

舎利弗言わく、「是の如し是の如し、憍尸迦。若し人、般若波羅蜜を敬礼せば、即ち是れ薩婆若智を敬礼するなり。般若波羅蜜従り諸仏の薩婆若智を生じ、薩婆若智従り還って般若波羅蜜を生ず。菩薩応に是の如く般若波羅蜜に住し、応に是の如く般若波羅蜜を習うべし」と。

釋提桓因、仏に白して言わく、「世尊、云何が菩薩、般若波羅蜜を行じて、名づけて般若波羅蜜に住すと為し、名づけて般若波羅蜜を習うと為す」と。

仏、釋提桓因に告げて言わく、「善きかな、善きかな、憍尸迦。汝能く仏に是の義を問う。汝が問う所は皆な是れ仏力なり。憍尸迦、若し菩薩、般若波羅蜜を行じて色に住せざれば、若し色に住せざれば即ち是れ色を習うなり。受想行識に住せざれば、若し識に住せざれば即ち是れ識を習うなり。復次に、憍尸迦、若し菩薩、色を習わざれば、若し色を習わざれば即ち色に住せざるなり。受想行識を習わざれば、若し識を習わざれば即ち識に住せざるなり。是の如く、憍尸迦、是れを菩薩の般若波羅蜜を習い、般若波羅蜜に住すと名づく」と。

舎利弗、仏に白して言わく、「世尊、般若波羅蜜は甚深無量無底なり」と。

仏、舎利弗に告げたまわく、「若し菩薩摩訶薩、色の甚深に住せざれば、是れを色の甚深を習うと為す。受想行識の甚深に住せざれば、是れを識の甚深を習うと為す。復次に、舎利弗、若し菩薩摩訶薩、色の甚深を習わざれば、是れを色の甚深に住せざると為す。受想行識の甚深を習わざれば、是れを識の甚深に住せざると為す」と。

「世尊、深般若波羅蜜は、応に阿毘跋致の菩薩の前に於て説くべし。是の人、是を聞きて疑わず悔いず」と。

爾の時、釋提桓因、舎利弗に語らく、「若し未だ記を受けざる菩薩の前に於て説かば、当に何の咎か有らん」と。

「憍尸迦、若し未受記の菩薩、深般若波羅蜜を聞くことを得ば、当に知るべし、是の菩薩は久しく大乗心を発し、受記に近く、久しからずして必ず受記を得。若し一仏二仏を過ぐれば、当に阿耨多羅三藐三菩提の記を受くべし」と。

仏言わく、「是の如し是の如し、舎利弗。若し未受記の菩薩、深般若波羅蜜を聞くことを得ば、当に知るべし、是の菩薩は久しく大乗心を発せり」と。

現代語の要約

帝釈が念じます。般若を聞くことを得た人は、已に曾て諸仏を供養している。受持読誦し、所説の如く学び行ずる者は、なおさらである。過去の諸仏の所で深般若を聞き、驚かず怖じない。

舎利弗が言います。能く信解すれば、その菩薩は阿毘跋致の如し。過去世に久しく行ぜざれば、信解できない。誹謗拒逆する者は、久已に誹謗拒逆している。信心無く、清浄心無く、疑を問わない。

帝釈が返します。甚深である。久しく行ぜざれば信解し能わざるは、怪しむに足りない。般若を敬礼するは、薩婆若智を敬礼する。

舎利弗も印します。般若から薩婆若智が生じ、薩婆若智から還って般若が生じる。応に是の如く住し、是の如く習うべし。

帝釈が、住と習の名を問います。仏は、色に住せざれば即ち色を習う、色を習わざれば即ち色に住せざる、と返します。舎利弗が甚深無量無底と讃え、仏は甚深についても同じ返しをします。住せざるが習い、習わざるが住せざる。

舎利弗が、深般若は阿毘跋致の前で説くべきだ、と言います。

帝釈が、未受記の前では何の咎か、と問います。舎利弗が返します。聞くことを得た未受記は、久しく大乗心を発し、受記に近い。一仏二仏を過ぐれば、記を受ける。

仏も、久しく大乗心を発せり、と印します。

ポイント 已に曾て供養せり

④で一番取り違えやすいのは、聞けば功徳が付く、と読むことです。

経は逆です。聞くことを得た人を、已に曾て諸仏を供養した者と知れ、と言います。今の聞が福を作るのではありません。過去の本相です。

不驚不怖も、勇気が付いた印ではありません。過去の諸仏の所で深般若を聞いた、と続きます。信解も同じ側です。久しく行ぜざれば信解し能わず。阿毘跋致の如し、も位を足しません。

拒逆も、今の罰として売りません。久已に誹謗拒逆せり。聞ける側も、拒む側も、今この場で新たに作られた話ではない。巻第三の拒逆の口に触れます。罰で閉じない。

住と習は、③の不行即行の側です。色に住せざれば、即ち色を習う。色を習わざれば、即ち色に住せざる。甚深を住する器にしない。習を修行の所有にしない。

未受記の前に説く咎を、帝釈が問います。返しは咎の勘定ではありません。久しく大乗心を発せり。記を山に積まない。福は認める。出所へ戻す。

つまずきやすい所

「得聞…已曾供養」を、聞いただけでも供養になる、と読まない。
已に曾て供養せり、です。聞を商品にしない。

「不驚不怖」を、恐れない人の資格、と読まない。
過去に聞いた、という本相です。

「如阿毘跋致」を、不退転の位を得た、と持たない。
如し、です。如を所有にしない。

「誹謗拒逆」を、罰の段にしない。
久已に、です。脅しに売らない。

「敬禮般若即是敬禮薩婆若智」を、智の山を拝む、と読まない。
般若の外に薩婆若を立てない。③の無礙薩婆若を、ここで山に戻さない。

「不住即是習」を、住まないことが新しい行、と持たない。
住せず、習わず、が互いに返るだけです。

「近於受記」を、すぐ記がもらえる、と売らない。
久発の大乗心を知れ、という口です。

不可思議を、神秘の商品にしない。
無我に開かない。非我の定義も足さない。「中道にして」の語は、この範囲にありません。定義は動かしません。

次回

⑤ 小品般若経 巻第四⑤ 無處所行にして行ず 有料
舎利弗の譬喩。夢に道場に坐す、険道の本相、大海、春の樹、懷妊。色不可思議を分別しない。久行。十力も薩婆若も分別しない。


タグ:小品般若経/小品般若波羅蜜経/巻第四/不可思議品/供養/不驚不怖/住習/経典解説

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