小品般若経 巻第三⑥ 破法は泥犁に展転す

記事の説明
泥犁品第八の破法の段。深般若を聞いて恭敬なく捨去する。過去にも捨去した故に、今も捨去する。無智の業が積もり、誹謗拒逆する。拒逆は薩婆若を拒逆し、三世の諸仏を拒逆する。破法の重罪ゆえに、大地獄から大地獄へ展転する。似五逆と見るな。罪は転増し、他人をも般若から離す。口業の因縁である。因縁は、魔に使われること、深妙法を信ぜず解せざること、悪知識、他の過を求め自ら高ぶること。不精進の者は信解が甚だ難しい。地獄を売らない。罰で品を閉じない。照明と母は⑦です。

今回の位置

⑤は、所用の心が即ち尽き即ち滅す、正迴向と雑毒、まででした。迴向品の残り(仏の讃、大迴向の較べ、不取不捨)は、⑤の次回に置きました。

⑥は泥犁品に入ります。ただし品の冒頭の舎利弗の讃(照明・母)は⑦です。色浄・識浄、無二無別も⑦です。

今回は、捨てて拒逆する段です。須菩提が問う。菩薩は発心して已来、幾時、般若を修習できるか。仏は、是の事は分別すべし、と返す。百千万億の仏に値って梵行を修する者がいる。その中に、大衆の中で深般若を聞き、恭敬なく即時に捨去する者がいる。

過去の諸仏の所で捨去した故に、今も捨去する。身心和せず、無智の業を起す。積集して誹謗拒逆する。拒逆は薩婆若を拒逆し、三世の諸仏を拒逆する。是の愚癡人、破法の重罪の業を起すが故に、百千万劫、大地獄の罪を受け、一大地獄から一大地獄へ展転する。火劫が起これば他方の大地獄へ堕ち、また展転し、還ってここに堕ちる。悪口の業の故である。

舎利弗が、是の業は五逆に似たり、と言う。仏は、似たりと言うな、と返す。学すべからず、仏の所説に非ず、と念じ、他人をも離す。罪は転増する。自他の身を壊し、自他に毒を飲ませ、自他を亡失する。出家も供養も聴さない。汚法者、糟粕、性は濁黒。

身量の大小は説くな。後世の明戒としては、すでに足りている。

須菩提が問う。口業のみで是の重罪を得るか。仏は、口業の因縁故である、と印す。拒逆の因縁は幾つか。魔に使われる。深妙法を信ぜず解せない。そのうえに、悪知識を得、善法を楽しまず、深く貪著し、常に他の過を求め、自ら高ぶり他人を卑しむ。不精進の者は信解が甚だ難しい。仏は、如是如是、と印します。

読む範囲は、「是菩薩発心已来、幾時能修習般若波羅蜜」から、「不精進者、信解般若波羅蜜甚難。如是如是」まで。色無縛無解と舎利弗の讃は、⑦です。

語注

泥犁(ないり) — niraya。地獄。品の名。ここで初めて出ます。怖ろしさの商品ではありません。破法の落ち先として置かれる。

梵行(ぼんぎょう) — 清らかな行。百千万億の仏に値い、その所で梵行を修する。それでも捨去する者がいる、と経は書く。行が足りないから捨去するのではない。

展転(てんてん) — 転がり移る。一大地獄から一大地獄へ。火劫が起これば他方へ。還ってここに堕ちる。一つの獄に止めて見せる文ではありません。

破法(はほう) — 法を破る。深般若を誹謗拒逆する業の名です。

誹謗拒逆(ひぼうこぎゃく) — そしり、拒み逆らう。「学すべからず、是の法は仏の所説に非ず」と念ずる。②の相似は、似た言葉で求め方を取り違える。⑥は、深般若そのものを拒む。二つを一つの名にしない。

捨去(しゃこ) — 捨てて去る。深般若を聞いて恭敬なく、即ち去る。今の捨去は、過去の諸仏の所での捨去に続く、と仏は見る。

無智業(むちごう) — 知らざる業。身心不和のうえに起す。積集して拒逆に至る。

薩婆若(さつばにゃ) — ③で出た一切智。拒逆の行き先が、ここで薩婆若、三世の諸仏、法宝、僧宝まで開く。三宝を別の山にしない。出所は深般若です。

火劫(かこう) — 火の劫。獄の世界が焼ける時。その時に他方の大地獄へ堕ちる。宇宙の終わりを説明する段ではありません。展転の続きです。

五逆(ごぎゃく) — 五つの逆罪。舎利弗が似たり、と言う。仏は、似たりと言うな、と返す。似せるな、です。同一視して売るな、です。

転増(てんぞう) — 罪が転た増す。自ら拒逆し、他人を般若から離す。一人の口が、他の行を閉ざす。

汚法(おほう) — 法を汚す。破法と並ぶ。破って汚す側の名です。相手を侮るための語にしない。

糟粕(そうはく) — 酒のかす。絞ったあとの残り。汚法者に続けて置かれる名です。

身量(しんりょう) — 受ける身の大小。舎利弗が説け、と願う。仏は置いて説くな、と返す。聞けば熱血が口から出る。憂愁して身が乾く。大きさを想像する段ではありません。

明戒(みょうかい) — 明らかな戒め。舎利弗は、身量を説けば後世の明戒になる、と請う。仏は、身量を説かずとも、罪業の因縁と苦悩の事だけで大明戒に足りる、と返す。

口業(くごう) — 口の業。身業口業意業を守護せよ、と須菩提は言う。仏は、是の重罪は口業の因縁故である、と限る。口を軽くする文ではありません。口が法を破る、です。

魔所使(ましょし) — 魔に使われる。拒逆の第一の因縁。②の当来の比丘が相似を説く、と並べて、魔の所有にしない。使われる、です。

悪知識(あくちしき) — ⑤の善知識の反対側。善法を楽しまず、他の過を求め、自ら高ぶり他人を卑しむ、と続きます。

不精進(ふしょうじん) — 精進しない。信解が甚だ難しい、と須菩提が言い、仏が印す。色無縛無解の開きは、まだ⑦です。

書き下し

須菩提、仏に白して言わく、「世尊、是の菩薩、発心し已来、幾時にして能く般若波羅蜜を修習する」と。

「須菩提、是の事は応に分別すべし。

菩薩有りて、若干百千万億の仏に値い、諸仏の所に於て梵行を修行す。有るいは大衆の中に於て深般若波羅蜜を聞くに、恭敬の心無く、即時に捨去す。

須菩提、当に知るべし、是の人、本過去の諸仏に於て、般若波羅蜜を説くを聞きて捨去するが故に、今深般若波羅蜜を聞くにもまた捨去す。身心和せず、無智の業を起す。無智の業の因縁を積集するが故に、般若波羅蜜を誹謗拒逆す。

須菩提、深般若波羅蜜を誹謗拒逆する者は、即ち薩婆若を誹謗拒逆す。薩婆若を誹謗拒逆する者は、即ち三世の諸仏を誹謗拒逆す。

須菩提、是の愚癡人、是の如き破法の重罪の業を起すが故に、若干百千万劫、大地獄の罪を受け、一大地獄従り一大地獄に至る。一大地獄従り一大地獄に至りて罪を受くる時、若し火劫起これば、他方の大地獄に堕つ。彼に於てもまた一大地獄従り一大地獄に至る。一大地獄従り一大地獄に至りて罪を受くる時、若し彼の火劫起これば、また他方の大地獄に堕つ。他方の大地獄に堕ち已って、また一大地獄従り一大地獄に至る。一大地獄従り一大地獄に至りて罪を受くる時、若し彼の火劫起これば、還って此の大地獄の中に堕つ。是の人、此に於てまた一大地獄従り一大地獄に至り、諸の劇苦を受く。是の如く展転して、乃至火劫また起るまで、是の無量の苦悩の業報を受く。何を以ての故に。悪口の業を起すが故に」と。

爾の時、舎利弗、仏に白して言わく、「世尊、是の如き業は五逆罪に似たり」と。

「舎利弗、汝此の破法の罪を五逆罪に似たりと謂うことなかれ。何を以ての故に。是の人、深般若波羅蜜を説くを聞きて誹謗拒逆し、是の念を作さく、応に是の法を学ぶべからず、是の法は仏の所説に非ず、と。是の因縁を以て、其の罪転増するが故に、また他人をして般若波羅蜜を離れしむ」と。

仏言わく、「是の人、自ら身を壊し、また他人の身を壊す。自ら毒を飲み、また他人に毒を飲ましむ。自ら亡失し、また他人を亡失す。自ら般若波羅蜜を知らず解せず、また他人に教えて知らず解せざらしむ。

舎利弗、我は尚お是の人の出家を聴さず。何に況んや我が法の中に於て供養を受けんをや。何を以ての故に。当に知るべし、是の人は汚法の者なり。当に知るべし、是の人は是れ糟粕なり。其の性は濁黒なり。若し衆生有りて其の言を信受せば、また是の劇苦の重罪を受くべし。何を以ての故に。舎利弗、若し般若波羅蜜を破り、若し般若波羅蜜を汚さば、当に知るべし、是の人は破法汚法の者なり」と。

舎利弗、仏に白して言わく、「世尊、是の人の受身の大小を説きたまわず」と。

仏、舎利弗に告げて言わく、「是の人の身量の大小を置け。説くことを須いず。是の人、若し其の身量を説くを聞かば、熱血当に口従り出づべし。若しは死し、若しは死に近し。若し其の身量を説くを聞かば、自ら此の罪を知り、憂愁深く入り、身体乾消す。是の故に其の受身の大小を説くことを須いず」と。

舎利弗、仏に白して言わく、「世尊、唯願わくは仏、是の人の身量を説きたまえ。後世の人をして明戒を得ることを得せしめ、是の罪業を以ての故に是の大身を受くと知らん」と。

仏、舎利弗に告げて言わく、「是の事、後世の衆生の為に大明戒と作るに足れり。是の如き罪業の因縁を積集するが故に、是の如き無量無辺の久しき劇苦悩を受く。舎利弗、是の事、善人の為に大明戒と作るに足れり」と。

須菩提、仏に白して言わく、「世尊、善男子・善女人、応に善く身業・口業・意業を守護すべし。世尊、但だ口業の因縁を以ての故に、是の如き重罪を得るや」と。

仏、須菩提に告げて言わく、「口業の因縁を以ての故に、是の如き重罪を得。須菩提、我が法の中に多く是の如き等の癡人有りて、深般若波羅蜜を誹謗拒逆す。

須菩提、深般若波羅蜜を誹謗拒逆する者は、即ち阿耨多羅三藐三菩提を誹謗拒逆す。阿耨多羅三藐三菩提を誹謗拒逆する者は、即ち過去未来現在の諸仏の薩婆若を誹謗拒逆す。薩婆若を誹謗拒逆する者は、即ち法宝を誹謗拒逆す。法宝を誹謗拒逆する者は、即ち僧宝を誹謗拒逆す。三宝を誹謗拒逆するが故に、即ち無量無辺の重罪の業を起す」と。

須菩提、仏に白して言わく、「世尊、若し人、深般若波羅蜜を誹謗拒逆せば、幾つの因縁有りや」と。

「須菩提、是の癡人、一には魔に使わる。二には深妙法に於て信ぜず解せず。

復次に、須菩提、是の癡人、悪知識を得、善法を修習することを楽しまず喜ばず。又た深く貪著し、常に他の過を求め、自ら其の身を高め、他人を卑しむ。須菩提、是の因縁を以ての故に、深般若波羅蜜を誹謗拒逆す」と。

須菩提、仏に白して言わく、「世尊、不精進の者、般若波羅蜜を信解すること甚だ難し」と。

仏言わく、「是の如し、是の如し、須菩提、不精進の者、般若波羅蜜を信解すること甚だ難し」と。

現代語の要約

須菩提が問います。菩薩は発心して已来、どれほどの時をかけて般若を修習できるのか。

仏は、是の事は分別すべし、と返します。一つに揃わない、ということです。

百千万億の仏に値い、その所で梵行を修する者がいる。そのうえで、大衆の中で深般若を聞き、恭敬の心なく、即時に捨てて去る者がいる。

仏は、今の捨去を、過去の諸仏の所での捨去に繋ぎます。身心和せず、無智の業を起す。積もって誹謗拒逆する。

拒逆する対象は、深般若だけに止まりません。薩婆若を拒逆し、三世の諸仏を拒逆する。破法の重罪ゆえに、大地獄から大地獄へ展転する。火劫が起これば他方へ堕ち、また展転し、還ってここに堕ちる。悪口の業の故である、と仏は限る。

舎利弗は、五逆に似たり、と言います。仏は、似たりと言うな、と返します。

理由が付きます。学すべからず、仏の所説に非ず、と念じ、他人をも般若から離す。その因縁で罪は転増する。自ら壊れ、他を壊す。自ら毒を飲み、他に飲ませる。自ら知らず解せず、他にも知らず解せざらしむ。

出家も供養も聴さない。破法汚法の者である。其の言を信受する者も、同じ劇苦を受ける。

身量の大小は説くな。聞けば熱血が口から出る。死ぬか、死に近づく。憂愁が深く入り、身体が乾き消える。舎利弗が、後世の明戒のために説け、と請うても、仏は説きません。罪業の因縁と、無量無辺の久しき劇苦。その事だけで、大明戒に足りている、と。

須菩提が、身口意を守れ、と受け、口業のみか、と問います。仏は、口業の因縁故である、と印す。

拒逆は無上の菩提を拒逆し、諸仏の薩婆若を拒逆し、法宝を拒逆し、僧宝を拒逆する。三宝を拒逆するが故に、無量無辺の重罪の業が起る。

因縁は何か。仏は二つを数えます。魔に使われる。深妙法を信ぜず解せない。そのうえに、と続けます。悪知識を得、善法を修習するのを楽しまず喜ばず、深く貪著し、常に他の過を求め、自ら高ぶり他人を卑しむ。

須菩提が言います。不精進の者は、般若を信解することが甚だ難しい。仏は、是の如し是の如し、と印します。

色が無縛無解である開きは、まだ次です。

ポイント 脅して売らず、拒逆を残さない

巻第三は、渡す福が山に戻らないかを見てきました。⑥は、渡した先で、深般若そのものを捨て、拒む口です。

②の相似は、同じ無常の語で求め方を取り違える。⑥は、是の法は学ぶな、仏の所説に非ず、と拒む。似た言葉と、拒む口は、別です。

仏は先に、分別すべし、と置きます。発心から修習までの時は、一つに揃わない。百千万億の仏に値って梵行を修していても、捨去する者はいる。行の量で線を引く段ではありません。

展転は、罰の絵を殖やすためではありません。一大地獄に止めない。火劫が来ても終わらない。還ってここに堕ちる。悪口の業が、場を変えて続く。口を取り違えない、の、落ち先です。

五逆に似たり、を仏は受けません。似せるな、です。拒逆は、他人を般若から離す。罪が転増するのは、そこです。自他を壊す。自他に毒を飲ませる。

⑤の雑毒は、有所得の迴向でした。⑥の毒は、解せずして他に拒ませる口です。品を混ぜない。

身量を説くな、は、想像を禁ずる慈悲です。大明戒は、すでに足りている。苦の長さを、見世物にしない。

因縁は、二つを数えたあとに、復次で足されます。魔と、信解せざること。そのうえに、悪知識と、他の過を求める習いが乗る。人柄の断定ではありません。条件が並んでいる、です。

不精進の者は信解が甚だ難しい。仏は印します。難しい、で⑥は閉じます。照明と母に戻るのは、⑦です。罰で巻を終わらせない。

つまずきやすい所

地獄の段を、商品の脅しにしない。
経は展転を書く。それを手順にも、勧める道具にもしない。落ち先を認めて、口を守る。

五逆と同一視しない。
舎利弗が似たり、と言う。仏は、似たりと謂うな、です。同じ棚に載せると、破法の転増が見えなくなる。

②の相似と、⑥の拒逆を一つの敵にしない。
相似は、色は無常なり、是の如く求めよ、と説く。拒逆は、学ぶな、仏説に非ず、と捨てる。口が違う。

身量を補って描かない。
仏は説くな、と二度言う。熱血も乾消も、説かない理由です。大きさを開く段ではない。

「出家を聴さず」を、人を切る文にしない。
汚法・糟粕は、破って汚す側の名です。聞いた者を先に裁く文ではない。其の言を信受すれば、同じ劇苦を受ける、と続く。離す口が、他の身に移る。

梵行の量で、安心も断定もしない。
百千万億の仏に値った者が捨去する、と経は書きます。行を積んだから外れない、とも、捨去した者は初めから外だ、とも読まない。

不精進を、精進の勝負にしない。
甚だ難しい、です。できない者を捨てる文ではありません。⑦の無縛無解・色浄が、その難しさの中身を開きます。今は印までです。

次回

舎利弗が、品の入口で讃えた句に戻ります。般若は照明を作し、盲者に眼を与え、邪行の者を正道に入らしむ。諸菩薩の母である。敬視すること、仏を敬視するが如し。

そのあと、不精進の難しさが開きます。色は無縛無解、色の真性是れ色。色浄即ち果浄、色浄即ち薩婆若浄、無二無別、無異無壊。識もまた是の如し。

罰で終わらず、照明と母で巻第三を閉じます。⑦です。


泥犁品/破法/誹謗拒逆/口業/小品般若経/経典解説/巻第三

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