11. 『大日経』如来身会の11番「施無畏印(せむいいん)」の真言

お示しの真言は、前回整理したです。

全体の意味としては、「あまねく一切の仏たちに帰命いたします。すべての点において、勝者(如来)よ、勝者よ、あらゆる恐怖を打ち滅ぼす者よ、成就あれ」となります。

サンスクリット語の単語ごとに詳しく分解すると、以下のようになります。

  • namaḥ(ナマッ) 「帰命する」「礼拝する」という意味です。
  • samanta-buddhānām(サマンタ・ブッダーナーム) 「普く(サマンタ)」「一切の仏たちに(ブッダーナーム)」という意味です。『大日経』の真言の冒頭に置かれるお決まりの定型句です。
  • sarvathā(サルヴァター) 「すべての点において」「いかなる場合も」「常に」という意味の副詞です。
  • jina jina(ジナ・ジナ) 「ジナ」は「勝者」を意味し、煩悩や魔に打ち勝った者、すなわち「仏・如来」を指す尊称です。ここでは呼びかけ(呼格)として「勝者よ、勝者よ」と2回繰り返されています。
  • bhayanāśana(バヤナーシャナ) 「バヤ(bhaya)」は恐怖や怖畏、「ナーシャナ(nāśana)」は破壊する者、滅ぼす者を意味します。合わせて「恐怖を打ち滅ぼす者よ」となります。
  • svāhā(スヴァーハー) 「幸あれ」「成就あれ」という意味で、真言の最後を締めくくる結句(ソワカ)です。

『大日経疏』の解説との見事な一致

前回の「11. 施無畏印」の疏の説明と、この真言の言葉はピタリと符合しています。

  1. 「勝(jina)」を2回繰り返す理由 前回のメモにあった疏の説明に*「『勝』を重ねて言うのは、まず異生の煩悩を離れ、次に二乗の煩悩を離れるから。勝中の勝」とありました。この「勝を重ねて言う」というのが、まさに真言の中の*「jina jina」のことです。凡夫(異生)の煩悩に打ち勝ち、さらに声聞・縁覚(二乗)の限界にも打ち勝つという、二重の勝利を示しています。
  2. 恐怖を除く(bhayanāśana) 疏にあった*「愛と恚が即座に息む。未来の種々の大いなる怖畏も除く」という働きは、この*「bhayanāśana(恐怖を滅ぼす者)」という言葉そのものの解説です。貪り(愛)や怒り(恚)から生じる現在の恐怖も、未来に起こり得る恐れも、すべて如来の力によって取り除かれることを意味しています。

仏の「恐れを取り除く働き(施無畏)」を、言葉の力としてそのままパッケージしたのがこの真言だと言えます。





11. 『大日経』如来身会の11番「施無畏印(せむいいん)」の真言

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