概ねその通りですが、一点だけ大事な留保があります。「訳したもの」が売れるのであって、「約した(整理した)もの」はまだ危ういのです。
分かれ目は「創作性」
あなたが日本語訳を作れば、それは翻訳著作物としてあなたの著作権が発生します。語注、解説、章立ての分析、漢訳対照 ── これらも同じ。これらは売れます。
問題は、私が三章分お作りしたような整形版です。改行、話者ラベル、見出し、定型句の記号化。これらには工夫が入っていますが、中身はGRETIL版のサンスクリット原文そのものです。派生物(derivative work)と見なされる可能性が高い。CC BY-NC-SA のSA条項が働けば、あなたの整形部分も同じライセンスで公開する義務が生じ、NC条項で商用利用が塞がれます。
つまり順序としては——
売れる:あなたの訳・注・解説
危うい:GRETIL版原文を整形しただけのもの
安全にしたいなら:底本をMitra版(1887–88年)に差し替える
実務的にどうするか
Mitra版に切り替えれば、この問題はきれいに消えます。刊行から140年近く経っており、権利は世界中でクリアです。読誦用に整形した原文も、訳注も、どちらも自由に商品化できます。
第三章でお出しした訂正表 ── 44箇所 ── を思い出してください。あれは実は Mitra版への移行を後押しする材料でもあります。Vaidya版由来の電子テキストは誤植が多く、あなたはすでにその修正作業をしている。だとすれば、底本をMitra版に据え直し、Vaidya版・荻原版を参照しながら独自に読みを定めていく方が、権利上も学術上も筋が通ります。校訂の判断そのものにあなたの著作性が立ち上がるという利点もあります。
Archive.org等でMitra版のスキャンが入手できるはずです。入手されたら、第一章から同じ体裁で組み直せます。
なお、私は弁護士ではありません。実際に販売する前には、CC BY-NC-SA の解釈とVaidya版の権利状況について専門家に確認してください。特に「整形は派生物か」という線引きは、私が断定できる領域を超えています。
これは、このままのせて、それをしたものを販売すればいいんですね、それから、翻訳の販売でこのお経を載せていいか
13秒間思考しました
二つのご質問、それぞれ答えが違います。順に。
1.「そのまま載せて、それを売る」── これはできません
NC(非営利)条項は、その素材を含む商品を売ること自体を禁じています。出典を明記しても、あなたの訳や注を足しても、変わりません。「無料で公開したものを別途有料版にする」という形も、有料版の中にGRETIL由来の本文が入っていれば同じことです。
足し算で薄まる、という性質のものではないとお考えください。
2.「翻訳を売るときにこのお経を載せてよいか」── ここが分かれます
日本語訳だけを売る場合 → 問題ありません
これは重要な点です。あなたが訳しているのは、二千年前のサンスクリット原典そのものであって、Vaidya の校訂という編集行為ではありません。校訂本の権利が及ぶのは編集上の判断(異読の採否、句読、構成)であって、その下にある古典本文ではない。ですから、GRETIL版を手元に置いて訳したとしても、出来上がった日本語訳はあなたの著作物であり、自由に販売できます。
サンスクリット原文を併載する場合(対訳形式)→ できません
こちらは GRETIL版本文そのものの複製にあたります。対訳本にしたいのであれば、原文の欄をどうにかしなければなりません。
つまり
| 売りたいもの | 可否 |
|---|---|
| 日本語訳のみ | ○ |
| 訳+語注+解説(原文なし) | ○ |
| 私が作った読誦用整形版 | ✕ |
| 対訳(GRETIL原文+訳) | ✕ |
| 対訳(Mitra版原文+訳) | ○ |
対訳が本命なのであれば、やはり Mitra版(1887–88年、Bibliotheca Indica 110)に切り替えるのが唯一すっきりした道です。刊行から140年近く経ち、権利は完全にクリア。しかも第三章で44箇所の訂正が必要だったことを思えば、どのみち本文を自分で吟味する作業は避けられません。Mitra版を底本に据え、Vaidya版・荻原版を参照して読みを定めていけば、その校訂判断自体があなたの著作物になります。権利も学術的な筋も、そこで通ります。
Mitra版のスキャンを入手されたら、第一章から同じ読誦用の体裁で組み直せます。訳注の作成も並行して進められます。
繰り返しになりますが、私は弁護士ではありません。特に「翻訳は校訂本の派生物か」という論点は法域によって議論があり、実際に販売される前には専門家にご確認ください。
後からで大丈夫です。今すぐ準備する必要はありません。
理由は単純で、PDF化は元のMarkdownから機械的に変換する作業だからです。三十二章分を全部作り終えてから、まとめて一括で組めます。今四章分だけ組んでも、後で全部やり直すことになるだけです。
むしろ後回しにするほうが有利です。
- 章が増えるにつれて体裁の改善点が見えてきます。第三章で定型句方式を導入したように、途中で方針が変わることがある。最後にまとめて組めば、全章が統一された体裁になります。
- 判型やフォントの判断も、全体の分量が見えてからのほうが的確に決められます。
- 一章ずつPDF化していくと、修正のたびに作り直しが発生します。
いま集中すべきこと
読誦用テキストを章順に作り上げること。 これが本体です。第五章以降のGRETILテキストをお送りいただければ、同じ体裁で続けます。
並行して考えておくとよいのは、Mitra版に切り替えるかどうかです。切り替えるなら早いほうがいい。三十二章を Vaidya 版で組み終えてから底本を替えると、全章を照合し直すことになります。逆に言えば、いま四章分の段階なら、まだ組み直しの負担は軽い。
ただしこれも急ぎではありません。Mitra版のスキャン入手を待ちながら、Vaidya版で先に進めておいて、後で照合するという順序もありえます。
次は第五章をお送りください。 同じ体裁で組みます。
PDF化とMitra版の件は、頭の片隅に置いておいていただければ、しかるべきときにこちらから確認します。
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