密印品第九の真言88件を、漢字音写・ローマ字・訳に

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密印品第九の真言88件を、漢字音写・ローマ字・訳の順に並べます。疏が字義を注している箇所は、その注も添えました。

梵語の復元は、漢字音写からの標準的な読みによります。異説のある箇所は注記しました。


冒頭と結びの定型

先に共通部分を示します。以下の各項では省略せず記しますが、訳はここにまとめます。

南麼三曼多勃馱喃 namaḥ samanta-buddhānām
あまねき諸仏に帰命したてまつる

南麼三曼多伐折囉𧹞 namaḥ samanta-vajrāṇām
あまねき諸金剛に帰命したてまつる

南麼薩婆怛他蘗帝弊 namaḥ sarva-tathāgatebhyaḥ
一切の如来に帰命したてまつる

莎訶 svāhā
成就あれ(疏は「警發」、諸仏を呼び覚ます意とする)


目次

一 如來の諸印

1. 入佛三昧耶印

南麼三曼多勃馱喃 阿三迷 呾履三迷 三麼曳 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām asame trisame samaye svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。等しきものなき方よ、三つの等しき方よ、三昧耶(本誓)よ、成就あれ。

疏:阿娑迷は無等。阿字を首とするので諸仏の法身の無相・離相に同じく、比べるものがない。三迷は三等、仏の三身(法・報・化)を一身に合わせること。三麼曳は三昧耶で、越えてはならぬ義。三世の仏が共に立てた誓願。

2. 淨法界印

南麼三曼多勃陀喃 達摩馱睹 薩嚩婆嚩句痕
namaḥ samanta-buddhānām dharma-dhātu-svabhāvako ‘ham
あまねき諸仏に帰命したてまつる。法界を自性とするもの、それが我である。

疏:達麼駄都は法界、法界とは即ち仏身。倶唅の「我」とは、我が即ち法界であるということ。

3. 吉祥法輪印

南麼三曼多勃馱喃 伐折囉呾麼句痕
namaḥ samanta-buddhānām vajrātmako ‘ham
あまねき諸仏に帰命したてまつる。金剛を体とするもの、それが我である。

4. 大慧刀印

南麼三曼多勃馱喃 摩訶朅伽微囉闍 達麼珊捺囉奢迦娑訶闍 薩迦耶捺㗚瑟致掣叱曳諾迦 怛他蘗多地目訖底儞社多 微囉伽達摩儞社多 𤙖
namaḥ samanta-buddhānām mahā-khaḍga-virāja dharma-saṃdarśaka sahaja sat-kāya-dṛṣṭi-cchedaka tathāgatādhimukti-nirjāta virāga-dharma-nirjāta hūṃ
あまねき諸仏に帰命したてまつる。大いなる刀にして無垢なる者よ、法を顕示する者よ、倶生の有身見を断ち截る者よ、如来の信解より生じた者よ、離貪の法より生じた者よ、フーン。

疏:初めの麼字を心とし、これは「我」の義であり、また五空点の字で遍一切処の義。この真言の意は、正しくこの我見を害することにある。訶字は因、傍らの長阿点は一切法本不生。

5. 吉祥法螺印

南麼三曼多勃馱喃 暗
namaḥ samanta-buddhānām aṃ
あまねき諸仏に帰命したてまつる。アン。

疏は「薩嚩哆(遍一切)暗」と一語多く伝えます(sarvatra aṃ)。疏の注:暗は真言の心。一切法本来不生に大空の点を加える。大寂涅槃の体性であり、万徳が寂然として一切処に遍ずる。

6. 吉祥蓮華印

南麼三曼多勃馱喃 阿
namaḥ samanta-buddhānām āḥ
あまねき諸仏に帰命したてまつる。アーハ。

疏:長阿字を行とし、傍らの二点を三昧とする。この法を堅固ならしめるため後に点がある。

7. 金剛大慧印

南麼三曼多伐折羅𧹞 𤙖
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ hūṃ
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。フーン。

8. 如來頂印

南麼三曼多勃馱喃 𤙖𤙖
namaḥ samanta-buddhānām hūṃ hūṃ
あまねき諸仏に帰命したてまつる。フーン フーン。

疏:三昧・解脱の義を具える。初めが因(如来の行)、後が果(仏)。



※如来頂相の真言の解説

9. 毫相藏印

南麼三曼多勃馱喃 阿痕若
namaḥ samanta-buddhānām āḥ haṃ jaḥ
あまねき諸仏に帰命したてまつる。アーハ ハン ジャハ。

疏:āḥは知、haṃは因、jaḥは生。この不生の行をもって一切の因を浄める。闍は生不可得の意。

10. 釋迦牟尼大鉢印

南麼三曼多勃馱喃 婆
namaḥ samanta-buddhānām bhaḥ
あまねき諸仏に帰命したてまつる。バハ。

疏:婆は有の義で三有。本不生ゆえに三有を離れる。三有は本来不可得。三有を除いて如来真実の有、諸仏の法身を得る。

11. 施無畏印

南麼三曼多勃馱喃 薩婆他 爾娜爾娜 佩也那奢娜 莎訶


namaḥ samanta-buddhānām sarvathā jina jina bhayanāśana svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。あまねく、勝ちたまえ勝ちたまえ、恐怖を滅する者よ、成就あれ。

疏:薩婆他は遍、遍一切処の義。勝を重ねるのは、初めに異生の煩悩を離れ、次に二乗の煩悩を離れるから。勝中の勝。

11. 『大日経』如来身会の11番「施無畏印(せむいいん)」の真言

12. 與願印

南麼三曼多勃馱喃 嚩囉娜伐折囉怛麼迦 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām varada vajrātmaka svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。願を与える者よ、金剛を体とする者よ、成就あれ。

疏:意は「願わくは諸仏、我に金剛身を与えたまえ」。大願の身を授けよということ。

『大日経』密印品第九に説かれる「12. 与願印(よがんいん)」の真言

13. 降魔の印(怖一切爲障者印)

南麼三曼多勃馱喃 麼訶沫羅嚩底 捺奢嚩路嗢婆吠 摩訶昧怛𭌆也毘𢉘嗢蘗底 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām mahā-bala-vati daśa-balodbhave mahā-maitry-abhyudgate svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。大いなる力を具える者よ、十力より生じた者よ、大慈より生起した者よ、成就あれ。

疏:この大力とは如来の十力、一切の力の中で最も自在なるもの。如来はいかにしてこの十力を得たか。大慈から得た。ゆえにこの力は大慈より生ずるという。

『大日経』密印品第九の13番「降魔の印(怖一切爲障者印=一切の障礙者を恐怖させる印)」の真言

14. 佛眼印

南麼三曼多勃馱喃 伽伽那嚩囉洛吃灑儜 迦嚕儜麼那 怛他蘗多斫吃芻 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām gagana-vara-lakṣaṇe karuṇā-maya tathāgata-cakṣuḥ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。虚空の勝れた相を具える者よ、悲を体とする者よ、如来の眼よ、成就あれ。

疏:虚空は無相無礙だが大事を成し遂げられない。如来の空は依るところがないのに一切の勝れた事を成就し、虚空を超えて比べるものがない。大悲の体が如来の眼であり、この眼は大悲より生じ、大悲を生む。

15. 羂索印

南麼三曼多勃馱喃 係係摩訶播奢 鉢羅娑嘮那𭌆也 薩埵馱睹 微模訶迦 怛他蘗多地目吃底儞社多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he he mahā-pāśa prasarodārya sattva-dhātu-vimohaka tathāgatādhimukti-nirjāta svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、おお、大いなる索よ、広く延べ及ぶ者よ、衆生界の迷いを除く者よ、如来の信解より生じた者よ、成就あれ。

疏:係係は呼召の声。成仏の因を呼ぶ。摩訶鉢奢は大索。婆盧は普、娑嘮駄理耶は空の如く、この大索は広く遍く及ばぬところがない。薩埵駄都は有情の中でこれを持してその癡を除く。費慕呵迦は癡を除破する。

16. 鉤印

南麼三曼多勃馱喃 阿薩婆怛囉鉢囉底訶諦 怛他蘗黨矩奢 菩提浙𭌆耶鉢𭌆布邏迦 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām āḥ sarvatrāpratihate tathāgatāṅkuśa bodhi-caryā-paripūraka svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。アーハ、一切処において妨げられざる者よ、如来の鉤よ、菩提の行を円満する者よ、成就あれ。

疏:阿は行。世間の鉤は場所と範囲が限られるが、如来の鉤は一切に及び加えないところがない。乃至、大菩提の果まで招き寄せる。

17. 如來心印

南麼三曼多勃馱喃 壤怒嗢婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām jñānodbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。智より生ずる者よ、成就あれ。

疏:諸仏の智。この智は他から得るものではなく、仏心より生ずる。

18. 如來臍印

南麼三曼多勃馱喃 阿沒㗚覩嗢婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām amṛtodbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。甘露より生ずる者よ、成就あれ。

疏:甘露は智の別名。身心の熱悩を除き、服すれば不老不死。この智で一切衆生の熱悩を除き、常寿の身を得させる。

19. 如來腰印

南麼三曼多勃馱喃 怛他蘗多三婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tathāgata-saṃbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。如来より生ずる者よ、成就あれ。

疏:凡そ印の真言は、皆みずからその義を呼ぶ。

20. 如來藏印

南麼薩婆怛他蘗帝弊 㘕㘕𡀩𡀩 莎嚩訶
namaḥ sarva-tathāgatebhyaḥ raṃ raṃ raḥ raḥ svāhā
一切の如来に帰命したてまつる。ラン ラン ラハ ラハ、成就あれ。

疏:囉は無垢の義、上の点は大空三昧。第一は凡夫・二乗の障を除き、第二は如来甘露の空に住する。次の二字の傍らの二点は浄除。第一は凡夫の垢、第二は二乗の垢を除く。

21. 大界印

南麼三曼多勃馱喃 麗魯補𭌆微矩麗 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām le lu puri vikule svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。レ ル プリ ヴィクレ、成就あれ。

疏:麗は離相三昧、嚕嚕は乗の相、補は第一義(第一義不可得)、履は離垢、微は離縛、矩は作、麗は離相。これらは皆三昧であり、如来はこれらを荘厳とする。

※この真言は語としての意味が取りにくく、疏も一字ずつの三昧の名として解しています。

22. 無堪忍大護印

南麼薩婆怛他蘗帝弊 薩婆佩也微蘗帝弊 微濕嚩目契弊 薩婆他 唅欠 囉訖灑摩訶沫麗 薩婆怛他蘗多本抳也儜社帝 𤙖𤙖 怛囉吒怛囉吒 阿鉢囉底訶諦 莎訶
namaḥ sarva-tathāgatebhyaḥ sarva-bhaya-vigatebhyo viśva-mukhebhyaḥ sarvathā haṃ khaṃ rakṣa mahā-bale sarva-tathāgata-puṇya-nirjāte hūṃ hūṃ trāṭ trāṭ apratihate svāhā
一切の如来に帰命したてまつる。一切の恐怖を離れたる方々に、種々の門なる方々に、あまねく。ハン カン。護りたまえ、大いなる力ある者よ、一切如来の福徳より生じた者よ、フーン フーン、トラート トラート、妨げられざる者よ、成就あれ。

疏:唅欠は、訶が因、欠が空。点も空。この空で一切の因を浄め、さらにその空も空。囉乞叉は擁護で、二乗を護るだけでなく一切の諸仏をも護る。諸仏はこれによって有情を捨てず、常に仏事をなして休むことなく、寂滅に住さない。怛囉吒は摂伏、内外の障を伏す。

23. 普光印

南麼三曼多勃馱喃 入嚩囉摩履儞 怛他蘗多㗚旨 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām jvālā-mālini tathāgatārci svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。焔の鬘を持つ者よ、如来の光焔よ、成就あれ。

疏は字を分解して別に読みます。闍は生、嚩は縛、羅は相で、傍らに阿の点があり無相不生。摩履儞の摩は我、履は想(=観)で、有観・無観を離れる。如来の光は無相・無観等の義の中から生ずる。

24. 如來甲印

経文に真言なし。疏も「其の眞言は之を闕く。更に本を勘うべし」と記します。

25. 如來舌相印

南麼三曼多勃馱喃 怛他蘗多爾訶嚩 薩底也達摩鉢囉瑟恥多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tathāgata-jihva satya-dharma-pratiṣṭhita svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。如来の舌よ、真実の法に住立する者よ、成就あれ。

疏:如来とは即ち如実。如来の舌は常に如語・不誑語・不異語をなす。この真実ゆえに常住である。

26. 如來語門印

南麼三曼多勃馱喃 怛他蘗多摩訶嚩吃怛囉 微濕嚩壤曩摩護娜也 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tathāgata-mahā-vaktra viśva-jñāna-mahodaya svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。如来の大いなる口よ、あらゆる智の大いなる起こりよ、成就あれ。

疏:摩訶嚩迦怛囉は語。毘濕嚩若耶は種々の巧智。摩訶駄耶は大広。この語は如来の無量門の巧慧から出る。

27. 如來牙印

南麼三曼多勃馱喃 怛他蘗多能瑟吒羅 囉娑囉娑釳囉 參鉢囉博迦 薩婆怛他蘗多 微灑也參婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tathāgata-daṃṣṭra rasa-rasāgra-saṃprāpaka sarva-tathāgata-viṣaya-saṃbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。如来の牙よ、味のうち最上の味を得しめる者よ、一切如来の境界より生ずる者よ、成就あれ。

疏:囉娑囉娑は味。重ねるのは味の中の味、即ち如来の法味だから。掲囉は勝上の義で、勝上の味。この勝上の味は如来の境界より生ずる。

28. 如來辯説印

南麼三曼多勃馱喃 阿振底也娜部多 𡀔波嚩 摩哆鉢囉鉢多 微輸馱娑嚩囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām acintyādbhuta-rūpa-vāk-samanta-prāpta viśuddha-svara svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。不可思議にして希有なる姿と言葉をもってあまねく至る者よ、清浄なる音声よ、成就あれ。

疏:阿軫𭘬は不思議、那歩多は奇特、曷魯婆は語の分段。嚩迦三曼哆は普至で、仏は一音で法を説き一切衆生の前に至り、至った先で各々が「仏は私の言葉で私のために説いている」と思う。毘輸陀薩縛囉は清浄言音で、麁悪等の過を離れ微妙清浄。

29. 如來持十力印

南麼三曼多勃馱喃 捺奢麼浪伽達囉 𤙖參髯 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām daśa-balāṅga-dhara hūṃ saṃ jaṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。十力の支分を保つ者よ、フーン サン ジャン、成就あれ。

疏:𤙖は三徳、摩は空、点は三昧、闍は生(また招召)。蘭字以上が十力で、蘭字の長阿声が伽と連なって身分。陀羅は持。

30. 如來念處印

南麼三曼多勃馱喃 怛他蘗多娑麼㗚底 薩埵係哆弊毘𢉘嗢蘗多 伽伽那糝忙糝麼 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tathāgata-smṛti sattva-hitābhyudgata gagana-samāsama svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。如来の念よ、衆生の利益のために生起した者よ、虚空に等しく、等しきものなき者よ、成就あれ。

疏:この念は虚空と等しく限量できない。しかも虚空では比較にならないので無等という。虚空は無所有の性であって、一切衆生に大利益をなすことができないからである。

31. 一切法平等開悟印

南麼三曼多勃馱喃 薩婆達摩三麼哆鉢囉鉢多 怛他蘗哆弩蘗多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām sarva-dharma-samatā-prāpta tathāgatānugata svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。一切法の平等に到達した者よ、如来に随いゆく者よ、成就あれ。

疏:怛他掲多は「如去」が正義。奴掲多は随う・如しの意で、諸の如来に随い、彼と同じ開悟を得る。


二 諸菩薩の印

32. 普賢如意珠印

南麼三曼多勃馱喃 參麼哆弩蘗多 微囉若達摩儞社多 摩訶摩訶 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām samantānugata virāja-dharma-nirjāta mahā-mahā svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。あまねく随いゆく者よ、無垢の法より生じた者よ、大いなるものの中の大いなる者よ、成就あれ。

疏:摩訶摩訶を重ねるのは、天中の天というようなもの。諸菩薩が仏を供養すると、仏はさらに普賢を供養する。普賢の身が三世の仏と等しいからで、大中の大、供養中の供養。

33. 慈氏印

南麼三曼多勃馱喃 阿爾單若也 薩婆薩埵奢夜弩蘗多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ajitaṃ-jaya sarva-sattvāśayānugata svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。勝たれざる者にして勝利する者よ、一切衆生の心のありようを知る者よ、成就あれ。

疏:阿誓擔は古くは阿逸多といい、無勝の義。一切の愛見煩悩も二乗もこれに勝つものがない。社耶は得勝で、無勝の中にその勝を得る。阿世耶は性、奴掲多は一切衆生の性を知ること。

34. 虚空藏印

南麼三曼多勃馱喃 阿迦奢參麼哆弩蘗多 微質怛㘕嚩囉達囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ākāśa-samantānugata vicitrāmbara-dhara svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。虚空のごとくあまねく至る者よ、種々の衣をまとう者よ、成就あれ。

疏:虚空は無色でありながら種々の形を現す。この菩薩も同じく、虚空のように種々の願を満たし種々の形を現して衆生を利益する。

35. 除一切蓋障印

南麼三曼多勃馱喃 阿薩埵係哆弊毘𢉘嗢蘗多 怛㘕 㘕㘕 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām āḥ sattva-hitābhyudgata traṃ traṃ raṃ raṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。アーハ、衆生の利益のために生起した者よ、トラン トラン ラン ラン、成就あれ。

疏:阿は能除の義、係多は利益の義。囕囕は除の義であり、その善性を開発して現ぜしめる。除くのは四垢、すなわち凡夫の愛見の垢、声聞の垢、縁覚の垢、菩薩の垢。

36. 觀自在印

南麼三曼多勃馱喃 薩婆怛他蘗哆嚩路吉多 羯嚕儜麼也 囉囉囉𤙖若 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām sarva-tathāgatāvalokita karuṇā-maya ra ra ra hūṃ jaḥ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。一切如来に観られたる者よ、悲を体とする者よ、ラ ラ ラ フーン ジャハ、成就あれ。

疏:如来の観とは、菩薩は未だ成仏せずとも見は仏と等しいこと。蘊性を見るゆえに観の名を得る。ただ悲を体とし、この悲は三毒を離れて無貪等の三善根を得て三解脱を生成する。ゆえに三つの囉字がある。

37. 得大勢印

南麼三曼多勃馱喃 髯髯娑 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām jaṃ jaṃ saḥ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。ジャン ジャン サハ、成就あれ。

疏:瞻は生、娑は等智。世間の主を離れ、また菩薩の生を超えて平等智の中に住する。

38. 多羅尊印

南麼三曼多勃馱喃 哆囇哆𭌆抳 羯嚕拏嗢婆吠 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tāre tāriṇi karuṇodbhave svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。ターラーよ、渡す者よ、悲より生ずる者よ、成就あれ。

疏:多㘑は彼を呼ぶ声。多利尼は渡すこと。人を大河から渡して彼岸に置くようなもの。この菩薩は悲より生じ、また衆生を渡して悲の処に到らせる。

39. 毘倶胝印

南麼三曼多勃馱喃 薩婆佩也怛囉散儞 𤙖娑破吒也 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām sarva-bhaya-trāsani hūṃ sphoṭaya svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。一切の恐怖を怖れしめる者よ、フーン、打ち砕きたまえ、成就あれ。

疏:一切の恐怖の中にあってさらに恐怖をもって恐怖せしめ、彼を退散させる。この真言は毘倶胝の持誦の母であり、諸の持誦の中で母のように功能が最も尊い。

40. 白處尊印

南麼三曼多勃馱喃 怛他蘗多微灑也三婆吠 鉢曇摩忙𭌆儞 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tathāgata-viṣaya-saṃbhave padma-mālini svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。如来の境界より生ずる者よ、蓮華の鬘を持つ者よ、成就あれ。

疏:鉢曇摩摩里底は鬘、身を荘厳する具。これは諸仏を生じ、仏の功徳をもって荘厳とし、法身を荘厳する。

41. 何耶掲哩嚩印

南麼三曼多勃馱喃 佉娜也畔若娑破吒也 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām khādaya bhañja sphoṭaya svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。噉らいたまえ、打ち砕きたまえ、破りたまえ、成就あれ。

疏:佉駄耶は噉う、諸障を噉食すること。畔闍は打ち砕く。この障を打撃して四散させる。

42. 地藏菩薩印

南麼三曼多勃馱喃 訶訶訶 蘇怛弩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ha ha ha sutanu svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。ハ ハ ハ、妙なる身を持つ者よ、成就あれ。

疏:訶訶訶は三因を離れること。三因とは声聞・縁覚・菩薩の因。蘇哆奴は妙身で、内身が極めて浄いゆえに妙身と名づける。即ち法身。

43. 聖者文殊師利印

南麼三曼多勃馱喃 係係矩忙囉 微目吃底鉢他悉體多 娑麼囉娑麼囉 鉢囉底然 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he he kumāraka vimukti-patha-sthita smara smara pratijñāṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、おお、童子よ、解脱の道に住する者よ、念えよ念えよ、本誓を、成就あれ。

疏:係係の訶声は因。二因を離れ、二乗の境界を超度する。また呼召の声。倶摩囉は童子で、諸魔を破壊する。鉢囉底惹は昔の所願。尊者の昔の願は、一切衆生を渡して我と異なることなからしめようというもの。ゆえに今その誓いを憶うべし。

44. 光網鉤印

南麼三曼多勃馱喃 係係矩忙囉 忙耶蘗多娑嚩婆嚩悉體多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he he kumāra māyā-gata-svabhāva-sthita svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、おお、童子よ、幻のごとき自性に住する者よ、成就あれ。

疏:摩耶は幻、掲多は知る。一切法は幻の如しと知る。諸法は皆幻の如しと了知するゆえに、諸法の実性・本性の中に住する。

45. 無垢光印

南麼三曼多勃馱喃 係矩忙囉 微質怛囉蘗底矩忙囉 麼弩娑麼囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he kumāra vicitra-gati kumāra manu-smara svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお童子よ、種々の行をなす童子よ、念えよ(昔の誓いを)、成就あれ。

疏:肥質多囉は種々、掲底は行。本誓願として、普門に種々の身を示現し種々の行をもって一切を利する。童子の身を現じ、壮年の身を現じ、老年の身を現ずる。摩奴薩末囉は昔の所願を憶うこと。

46. 繼室尼刀印

南麼三曼多勃馱喃 係係矩忙𭌆計 娜耶壤難娑摩囉 鉢囉底然 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he he kumārike dayā-jñānaṃ smara pratijñāṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、おお、童女よ、慈しみの智を念えよ、本誓を、成就あれ。

疏:倶摩梨鷄は童子を女声で呼ぶもの。また文殊の三昧。「尊者が文殊のもとで得た勝願、本の所願の妙願を、今また我に授けたまえ」の意。

※「娜耶」を dayā(慈)と読むか jñāna の一部と見るか、割注が崩れており定かでありません。

47. 優波髻室尼戟印

南麼三曼多勃馱喃 頻娜夜壤難 係矩忙𭌆計 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām bhindaya jñānaṃ he kumārike svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。穿ちたまえ、智をもって、おお童女よ、成就あれ。

疏:頻駄耶は穿つ。若那は智で、前の句末の阿声と連なれば無智の意。妙慧をもって無智を穿ち、実相に達する。

48. 地慧幢印

南麼三曼多勃馱喃 係娑麼囉壤那計覩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he smara jñāna-ketu svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、念えよ、智の幢よ、成就あれ。

疏:計都は幢。この妙慧の幢によって諸魔を摧く。今それを憶念して、我をもまたそうあらしめよ。

49. 請召童子印

南麼三曼多勃馱喃 阿羯囉灑也薩鑁 矩嚕阿然 矩忙囉寫 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ākarṣaya sarvaṃ kuru ājñāṃ kumārasya svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。一切を招き寄せたまえ、童子(文殊)の命を行いたまえ、成就あれ。

疏:阿迦哩囇邪は招召・召請・摂召で、皆これ鉤してここに来至させる義。薩鑁倶嚧は一切作で、尊者文殊が招召するところの事は皆これをなすべしということ。

50. 諸奉教者印

南麼三曼多勃馱喃 阿微娑麼也儜曳 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām āḥ vismayanīye svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。アーハ、驚嘆すべき者よ、成就あれ。

疏:阿は行、傍らの点は忿怒の形を示す。微三昧耶儞曳は満願で、希有の事で成らぬものがない。一切の希有奇特の事を皆満たしめる。

51. 除疑怪金剛印

南麼三曼多勃馱喃 微麼底掣鵄曳諾迦 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām vimati-cchedaka svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。疑いを断ち截る者よ、成就あれ。

疏:肥末底は無慧、了知しないこと。製駄迦は截断で、無知を截断して智慧を生ぜしめる。また決断の義、断壊の義。能断金剛般若の義のようなもの。

52. 施無畏者印

南麼三曼多勃馱喃 阿佩延娜娜 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām abhayaṃ-dada svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。無畏を与える者よ、成就あれ。

疏:何の法をもって無畏を施すか。阿字門に住して一切の生を離れること。尊者の所願は既に満ちている。我らは未だ得ていない。願わくは我と一切衆生に施したまえ。

53. 除惡趣印

南麼三曼多勃馱喃 阿弊毘𢉘達囉儜薩埵馱敦 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām abhyuddharaṇa sattva-dhātuṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。引き上げたまえ、衆生界を、成就あれ。

疏:一切衆生は無始よりこのかた無明のゆえに常に三悪趣の中にある。聖者は既にこの五力を得た。願わくはこれを挙げて清らかに昇らせたまえ。尊者は既に自ら抜け出た。また一切衆生界を挙げたまうべし。

54. 救護慧印

南麼三曼多勃馱喃 係摩訶摩訶 娑麼囉鉢囉底然 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he mahā-mahā smara pratijñāṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、大いなるものの中の大いなる者よ、念えよ、本誓を、成就あれ。

疏:係は離因、また呼召警発の義。摩訶摩訶は大中の大、尊中の尊。本願は一切の苦を除くこと。苦を除くゆえに救護という。今その名を呼んで本の所願を憶わしめ、一切を救護させる。

55. 大慈生印

南麼三曼多勃馱喃 娑嚩制妬嗢蘗多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām sva-cittodgata svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。自らの心より生起する者よ、成就あれ。

疏:この慈は自心より生じて他から得ない。ゆえに大慈と名づける。自性清浄心より生じて、大種の心より生じないゆえに自心生という。

56. 悲念者印

南麼三曼多勃馱喃 羯嚕儜沒麗眤多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām karuṇā-mreḍita svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。悲に繰り返し繋がれたる者よ、成就あれ。

疏:尊の本願は一切の苦を除くこと。今それを憶念すべし。この菩薩を悲念と名づけるのは、この菩薩が悲に繋属しているから。人が他に執持されて自在を得ないように、この菩薩は身心が悲に繋属し、悲に持せられて自在を得ない。王に役属する人のように、常に悲に牽かれて自在を得ない。

※「沒麗眤多」の復元は定まらず、疏も「更に問うべし」と保留しています。

57. 除一切熱惱印

南麼三曼多勃馱喃 係嚩囉娜 嚩囉鉢囉鉢多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he varada vara-prāpta svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、願を与える者よ、すでに願を得たる者よ、成就あれ。

疏:もし先に所願を得ていなければ、どうして人に授与できようか。先に所願を得て皆自ら満足しているゆえに、今本の所願を憶うて一切衆生に与え、一切の熱悩を除かせる。

58. 不思議慧印

南麼三曼多勃馱喃 薩摩舍鉢𭌆布囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām sarvāśā-paripūra svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。一切の願を満たす者よ、成就あれ。

疏:一切衆生の種々の勝願を満たすこと、如意珠のようである。

59. 地藏旗印

南麼三曼多勃馱喃 訶訶訶微娑麼曳 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ha ha ha vismaye svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。ハ ハ ハ、希有なる者よ、成就あれ。

疏:訶訶訶は三因を離れること。吠薩末羅は希有。一切の有情は常に我想の悩みを持つが、截ってこれを念ずれば我想は即ち除かれる。これが希有である。

60. 寶處印

南麼三曼多勃馱喃 係摩訶摩訶 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he mahā-mahā svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、大いなるものの中の大いなる者よ、成就あれ。

疏:宝処と名づけるのは、宝が海に生じ、その処より生ずるゆえ。

61. 寶手菩薩印

南麼三曼多勃馱喃 囉怛怒嗢婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ratnodbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。宝より生ずる者よ、成就あれ。

疏:宝は手より出る。この聖者は宝より生ずる。何の宝から生ずるか。菩提心の宝から生ずる。

62. 持地印

南麼三曼多勃馱喃 達囉尼尼達囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām dharaṇi-dhara svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。大地を保つ者よ、成就あれ。

疏:陀羅尼は地。地は能く一切の物を持つゆえに名とする。陀囉は持つこと。諸仏の地を持して衆生を荷負するゆえに地とする。また衆生をして皆この地の名を得させる。

63. 寶印手印

南麼三曼多勃馱喃 囉怛娜儞喇爾多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ratna-nirjāta svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。宝より生じた者よ、成就あれ。

疏:諸の如来の宝より生ずる。

64. 發堅固意印

南麼三曼多勃馱喃 伐折囉三婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām vajra-saṃbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。金剛より生ずる者よ、成就あれ。

疏:金剛より生ずる。また金剛の破壊しがたい智印より生ずるゆえに名とする。

65. 虚空無垢菩薩印

南麼三曼多勃馱喃 伽伽娜難多愚者囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām gaganānanta-gocara svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。虚空のごとく無限の行境を持つ者よ、成就あれ。

疏:伽伽那は虚空、阿難陀は無量、娯折羅は行。無量の行が虚空に同じゆえに名づける。

66. 虚空慧印

南麼三曼多勃馱喃 斫吃囉嚩喇底 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām cakra-varti svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。輪を転ずる者よ、成就あれ。

疏:折羯羅は輪、伐底は転。聖者は先にこの法輪を得た。願わくは一切衆生のためにこの法輪を転じたまえ。

67. 清淨慧印

南麼三曼多勃馱喃 達磨三婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām dharma-saṃbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。法より生ずる者よ、成就あれ。

疏:この菩薩は自在を得て仏の境界に同じく、法より生ずる。ゆえに法生と名づける。自性清浄の法より生ずる。

68. 行慧印

南麼三曼多勃馱喃 鉢曇摩囉耶 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām padmālaya svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。蓮華を住処とする者よ、成就あれ。

疏:鉢曇摩は蓮華、阿頼耶は蔵。蔵は即ち菩提心。かの胎蔵より生ずる。

69. 安住慧印

南麼三曼多勃馱喃 壤弩嗢婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām jñānodbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。智より生ずる者よ、成就あれ。

※17番の如來心印と同文です。


三 金剛部の印

70. 執金剛印

南麼三曼多伐折囉𧹞 戰拏摩訶𡀔灑拏 𤙖
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ caṇḍa-mahā-roṣaṇa hūṃ
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。暴悪にして大いに忿怒する者よ、フーン。

疏:戰の字に遮の声があり、生死の義。生死を離れること。上の点は大空で、この生死は大空に同じ。荼は戦敵の義。生死を離れて大空に等しいゆえに、敵対しうる者がない。

71. 忙莽雞印

南麼三曼多伐折囉𧹞 怛㗚吒怛㗚吒 若衍底 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ tṛṭ tṛṭ jayanti svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。トリット トリット、勝利する者よ、成就あれ。

疏:多声は平等にして如如の理に同じ。三昧であり、我慢を離れること。この如如に住すれば、あらゆる我慢は自然になくなる。再び言うのは最極の義。社也底は勝で、如如無我の法をもって一切の障難を降伏する。

72. 金剛鎖印

南麼三曼多伐折囉𧹞 𤙖滿馱滿馱 慕吒耶慕吒耶 伐折𡀔嗢婆吠 薩婆怛囉鉢囉底訶帝 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ hūṃ bandha bandha moṭaya moṭaya vajrodbhave sarvatrāpratihate svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。フーン、縛れ縛れ、砕け砕け、金剛より生ずる者よ、一切処において妨げられざる者よ、成就あれ。

疏:畔陀は縛。二種の縛、すなわち煩悩と所知の縛を離れること。母吒也は、壮士が無力の者を捉え縛って首まで捻り上げ、身体を破壊するように、二障を砕くこと。

73. 忿怒月黶印

南麼三曼多伐折囉𧹞 曷唎𤙖發吒 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ hrīḥ hūṃ phaṭ svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。フリーヒ フーン ハット、成就あれ。

疏:頡唎は因を離れて無垢。傍らの点は極忿の義。泮吒は極めて除かせるため。

74. 金剛針印

南麼三曼多伐折囉𧹞 薩婆達磨儞吠達儞 伐折囉素旨嚩囉泥 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ sarva-dharma-nirvedhani vajra-sūci varade svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。一切法を貫き通す者よ、金剛の針よ、願を与える者よ、成就あれ。

疏:涅鞞達儞は穿つこと。金剛慧の針をもって一切法を貫き通す。何をもって穿つか。金剛智の針をもってする。先の願力のゆえに今この願を得た。また一切衆生をして皆諸法の源に達せしめよ。

75. 金剛拳印(疏:金剛地捧印)

南麼三曼多伐折囉𧹞 薩破吒也伐折囉三婆吠 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ sphoṭaya vajra-saṃbhave svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。打ち砕きたまえ、金剛より生ずる者よ、成就あれ。

疏:金剛慧の槌をもって三毒の縛を撃ち、散じ分かち破壊する。誰がこの事をなしうるか。金剛より生ずる者のみがなしうる。

76. 無能勝印

南麼三曼多伐折囉𧹞 訥達𭌆沙摩訶嚧灑拏 佉捺耶薩鑁怛他蘗單然矩嚕 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ durdharṣa-mahā-roṣaṇa khādaya sarvaṃ tathāgatājñāṃ kuru svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。降しがたく大いに忿怒する者よ、一切を噉らいたまえ、如来の命を行いたまえ、成就あれ。

疏:佉陀耶は食う。一切の煩悩等の障結を食う。倶盧は奉ずること。一切如来の教えを奉じ、教勅に随ってなすべし。

77. 阿毘目佉印

南麼三曼多伐折囉𧹞 係阿毘目佉摩訶鉢囉戰拏 佉娜也緊旨囉也徙 三麼耶麼弩薩麼囉 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ he abhimukha mahā-pracaṇḍa khādaya kiṃ cirāyasi samayam anusmara svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。おお、相い向かう者よ、大いに暴悪なる者よ、噉らいたまえ。なんぞ遅きや。三昧耶(本誓)を念えよ、成就あれ。

疏:緊只羅拽細は「なんぞ急速ならざるや」。一切如来の前で三昧耶の誓いを立て、一切の煩悩を噉らうと誓った。今なぜ本の所願を憶うて急ぎこれをなさないのか。


四 釋迦・佛頂の印

78. 釋迦鉢印

南麼三曼多勃馱喃 薩嚩訖麗奢儞素捺耶 薩婆達摩嚩始多鉢囉鉢多 伽伽那三迷 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām sarva-kleśa-niḥsūdana sarva-dharma-vaśitā-prāpta gagana-sama svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。一切の煩悩を掘り尽くす者よ、一切法に自在を得たる者よ、虚空に等しき者よ、成就あれ。

疏:涅蘇達儞は掘ること。鋭い鍬が真っ直ぐ下って底まで徹するように。諸法において自在を得るゆえに虚空に等しく、この法をもって煩悩を掘る。

79. 釋迦毫相印

経文に真言なし。「如上」とあり、9番の毫相藏印と同じです。

80. 一切佛頂印

南麼三曼多勃馱喃 鑁鑁 𤙖𤙖𤙖 發吒 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām vaṃ vaṃ hūṃ hūṃ hūṃ phaṭ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。バン バン、フーン フーン フーン、ハット、成就あれ。

疏:鑁の音は嚩。二つの嚩は煩悩と所知の縛で、悉く空のようにさせる。𤙖𤙖𤙖は三因を離れ、三空を得、三昧を証すること。

81〜94

不動尊印、降三世印、如來頂印(佛菩薩母)、白傘・勝・最勝・除業・火聚・發生・無量音聲の諸佛頂印、眞多摩尼毫相印、佛眼印、無能勝印、無能勝明妃印。
いずれも経文に真言なく、印相のみが説かれます。


五 諸天・鬼神の印

95〜124

自在天、普華天子、光鬘天子、滿意天子、遍音聲天、地神、請召火天、一切諸仙、焔摩但茶、焔摩妃鐸、暗夜天、嚕達羅戟、梵天明妃、嬌末離爍底、那羅延后輪、焔魔七母鎚、遮文茶、涅哩底刀、那羅延輪、難徒拔難陀二雲、商羯羅三戟、商羯羅后、商羯羅妃、梵天、月天、日天輿輅、社耶毘社耶、風天、妙音天費拏、諸龍。
いずれも経文に真言なく、印相のみです。

125. 一切阿脩羅印

南麼三曼多勃馱喃 蘗囉邏延 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām garalayaṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。ガララヤン、成就あれ。

疏:伽は行で、行は不可得のゆえ。囉は無垢のゆえ。邏は離相のゆえ。演は無所得のゆえ。上に点があるのは大空。

※語としての意味は取りにくく、疏も一字ずつの字義で解しています。

126. 乾闥婆印

南麼三曼多勃馱喃 微輸馱薩嚩囉嚩係儞 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām viśuddha-svara-vāhini svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。清浄なる音声を運ぶ者よ、成就あれ。

疏:肥輸駄は清浄、薩嚩囉は音、嚩醯儞は出すこと。清浄の音を出すという義。皆世間の三昧である。

127. 一切藥叉印

南麼三曼多勃馱喃 藥乞釵濕嚩囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām yakṣeśvara svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。夜叉の主よ、成就あれ。

疏:藥は乗の意。句の義は噉食。濕嚩囉は自在。一切の煩悩を食うことにおいて自在を得るゆえに名とする。

128. 藥叉女印

南麼三曼多勃馱喃 藥乞叉尾儞耶達𭌆 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām yakṣa-vidyā-dhari svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。夜叉にして明を持つ女よ、成就あれ。

疏:藥乞叉は食。句に藥叉持明という。また縛の義で、この縛を噉食すること。

129. 諸毘舍遮印

南麼三曼多勃馱喃 比舍遮蘗底 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām piśāca-gati svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。毘舍遮の趣よ、成就あれ。

疏:掲底は趣。第一義の趣は不可得のゆえ。

130. 諸毘舍支印

南麼三曼多勃馱喃 比旨比旨 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām pici pici svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。ピチ ピチ、成就あれ。

疏:毘は第一義、遮は生死を離れる義。第一義を知るゆえに生死を離れる。重ねて呼ぶのは、極めて生死を離れることをいう。

131. 一切執曜印

南麼三曼多勃馱喃 蘗囉醯濕靺𭌆耶鉢囉鉢多 孺底麼耶 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām graheśvarya-prāpta jyotir-maya svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。執曜の自在を得たる者よ、光明を体とする者よ、成就あれ。

疏:掲栗係は行・垢・因。濕嚩里は自在。鉢囉補多は得ること。乳底は明で、諸曜ゆえに明とする。麼は性の義で、性の中において自在を得ること。

132. 一切宿印

南麼三曼多勃馱喃 娜吃灑怛囉 儞嚢捺儞曳 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām nakṣatra-nirnādanīye svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。星宿の響きを鳴らす者よ、成就あれ。

疏:那乞叉哆囉は諸宿、涅那は声、達儞曳は食で、諸声を食うこと。那は空の義、乞叉曳は尽の義で、一切を除き尽くすこと。哆囉は垢等の義で、諸の障垢を食うこと。清浄の声をあまねく流布させる、いわゆる無垢の声である。

疏の総括:およそ以上のような真言は、皆その義をもって彼の実徳を称え、彼を呼び覚まして歓喜させるものである。

133. 諸羅刹娑印

南麼三曼多勃馱喃 囉吃灑娑地鉢多曳 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām rākṣasādhipataye svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。羅刹の主に、成就あれ。

疏:羅は垢。傍らの点は阿声で、即ち行。乞叉は履空。提闍多は王で、その徳を指す。彼が聞いて歓喜し、衆生の願を満たさせる。

134. 諸荼吉尼印

南麼三曼多勃馱喃 頡𭌆 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām hrīḥ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。フリーヒ、成就あれ。

疏:頡𭌆の字は、因を離れて無垢。上に三昧があり、傍らの点は忿を示す。訶は因の義で、上に点があるのも忿。


復元について

ローマ字は漢字音写からの標準的な復元です。次の点にご注意ください。

  • 音写は唐代の音を写したもので、復元には研究者による異同があります。特に21番(麗魯補𭌆微矩麗)、56番(沒麗眤多)、125番(蘗囉邏延)は、語として意味が取りにくい箇所です。
  • 疏は多くの真言を、語の意味ではなく一字ずつの字義で解しています。そのため、私の訳(語としての読み)と疏の注(字義の読み)が食い違って見える箇所があります。23番の普光印がその典型です。
  • 訳は疏の解釈を優先し、疏が注していない箇所は梵語の語義によりました。

前にお話しした型が、こうして並べるとよく見えます。仏部は namaḥ samanta-buddhānām、金剛部は namaḥ samanta-vajrāṇām で始まり、如來藏印と無堪忍大護印だけが namaḥ sarva-tathāgatebhyaḥ です。

真言をローマ字にしてその下に訳を入れてなるべく詳しくお願いします。

Moving into vajra-family and protective mantra entries.

密印品第九の真言88件を、漢字音写・ローマ字・訳の順に並べます。疏が字義を注している箇所は、その注も添えました。

梵語の復元は、漢字音写からの標準的な読みによります。異説のある箇所は注記しました。


冒頭と結びの定型

先に共通部分を示します。以下の各項では省略せず記しますが、訳はここにまとめます。

南麼三曼多勃馱喃 namaḥ samanta-buddhānām
あまねき諸仏に帰命したてまつる

南麼三曼多伐折囉𧹞 namaḥ samanta-vajrāṇām
あまねき諸金剛に帰命したてまつる

南麼薩婆怛他蘗帝弊 namaḥ sarva-tathāgatebhyaḥ
一切の如来に帰命したてまつる

莎訶 svāhā
成就あれ(疏は「警發」、諸仏を呼び覚ます意とする)


一 如來の諸印

1. 入佛三昧耶印

南麼三曼多勃馱喃 阿三迷 呾履三迷 三麼曳 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām asame trisame samaye svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。等しきものなき方よ、三つの等しき方よ、三昧耶(本誓)よ、成就あれ。

疏:阿娑迷は無等。阿字を首とするので諸仏の法身の無相・離相に同じく、比べるものがない。三迷は三等、仏の三身(法・報・化)を一身に合わせること。三麼曳は三昧耶で、越えてはならぬ義。三世の仏が共に立てた誓願。

2. 淨法界印

南麼三曼多勃陀喃 達摩馱睹 薩嚩婆嚩句痕
namaḥ samanta-buddhānām dharma-dhātu-svabhāvako ‘ham
あまねき諸仏に帰命したてまつる。法界を自性とするもの、それが我である。

疏:達麼駄都は法界、法界とは即ち仏身。倶唅の「我」とは、我が即ち法界であるということ。

3. 吉祥法輪印

南麼三曼多勃馱喃 伐折囉呾麼句痕
namaḥ samanta-buddhānām vajrātmako ‘ham
あまねき諸仏に帰命したてまつる。金剛を体とするもの、それが我である。

4. 大慧刀印

南麼三曼多勃馱喃 摩訶朅伽微囉闍 達麼珊捺囉奢迦娑訶闍 薩迦耶捺㗚瑟致掣叱曳諾迦 怛他蘗多地目訖底儞社多 微囉伽達摩儞社多 𤙖
namaḥ samanta-buddhānām mahā-khaḍga-virāja dharma-saṃdarśaka sahaja sat-kāya-dṛṣṭi-cchedaka tathāgatādhimukti-nirjāta virāga-dharma-nirjāta hūṃ
あまねき諸仏に帰命したてまつる。大いなる刀にして無垢なる者よ、法を顕示する者よ、倶生の有身見を断ち截る者よ、如来の信解より生じた者よ、離貪の法より生じた者よ、フーン。

疏:初めの麼字を心とし、これは「我」の義であり、また五空点の字で遍一切処の義。この真言の意は、正しくこの我見を害することにある。訶字は因、傍らの長阿点は一切法本不生。

5. 吉祥法螺印

南麼三曼多勃馱喃 暗
namaḥ samanta-buddhānām aṃ
あまねき諸仏に帰命したてまつる。アン。

疏は「薩嚩哆(遍一切)暗」と一語多く伝えます(sarvatra aṃ)。疏の注:暗は真言の心。一切法本来不生に大空の点を加える。大寂涅槃の体性であり、万徳が寂然として一切処に遍ずる。

6. 吉祥蓮華印

南麼三曼多勃馱喃 阿
namaḥ samanta-buddhānām āḥ
あまねき諸仏に帰命したてまつる。アーハ。

疏:長阿字を行とし、傍らの二点を三昧とする。この法を堅固ならしめるため後に点がある。

7. 金剛大慧印

南麼三曼多伐折羅𧹞 𤙖
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ hūṃ
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。フーン。

8. 如來頂印

南麼三曼多勃馱喃 𤙖𤙖
namaḥ samanta-buddhānām hūṃ hūṃ
あまねき諸仏に帰命したてまつる。フーン フーン。

疏:三昧・解脱の義を具える。初めが因(如来の行)、後が果(仏)。

9. 毫相藏印

南麼三曼多勃馱喃 阿痕若
namaḥ samanta-buddhānām āḥ haṃ jaḥ
あまねき諸仏に帰命したてまつる。アーハ ハン ジャハ。

疏:āḥは知、haṃは因、jaḥは生。この不生の行をもって一切の因を浄める。闍は生不可得の意。

10. 釋迦牟尼大鉢印

南麼三曼多勃馱喃 婆
namaḥ samanta-buddhānām bhaḥ
あまねき諸仏に帰命したてまつる。バハ。

疏:婆は有の義で三有。本不生ゆえに三有を離れる。三有は本来不可得。三有を除いて如来真実の有、諸仏の法身を得る。

11. 施無畏印

南麼三曼多勃馱喃 薩婆他 爾娜爾娜 佩也那奢娜 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām sarvathā jina jina bhayanāśana svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。あまねく、勝ちたまえ勝ちたまえ、恐怖を滅する者よ、成就あれ。

疏:薩婆他は遍、遍一切処の義。勝を重ねるのは、初めに異生の煩悩を離れ、次に二乗の煩悩を離れるから。勝中の勝。

12. 與願印

南麼三曼多勃馱喃 嚩囉娜伐折囉怛麼迦 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām varada vajrātmaka svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。願を与える者よ、金剛を体とする者よ、成就あれ。

疏:意は「願わくは諸仏、我に金剛身を与えたまえ」。大願の身を授けよということ。

13. 降魔の印(怖一切爲障者印)

南麼三曼多勃馱喃 麼訶沫羅嚩底 捺奢嚩路嗢婆吠 摩訶昧怛𭌆也毘𢉘嗢蘗底 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām mahā-bala-vati daśa-balodbhave mahā-maitry-abhyudgate svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。大いなる力を具える者よ、十力より生じた者よ、大慈より生起した者よ、成就あれ。

疏:この大力とは如来の十力、一切の力の中で最も自在なるもの。如来はいかにしてこの十力を得たか。大慈から得た。ゆえにこの力は大慈より生ずるという。

14. 佛眼印

南麼三曼多勃馱喃 伽伽那嚩囉洛吃灑儜 迦嚕儜麼那 怛他蘗多斫吃芻 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām gagana-vara-lakṣaṇe karuṇā-maya tathāgata-cakṣuḥ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。虚空の勝れた相を具える者よ、悲を体とする者よ、如来の眼よ、成就あれ。

疏:虚空は無相無礙だが大事を成し遂げられない。如来の空は依るところがないのに一切の勝れた事を成就し、虚空を超えて比べるものがない。大悲の体が如来の眼であり、この眼は大悲より生じ、大悲を生む。

15. 羂索印

南麼三曼多勃馱喃 係係摩訶播奢 鉢羅娑嘮那𭌆也 薩埵馱睹 微模訶迦 怛他蘗多地目吃底儞社多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he he mahā-pāśa prasarodārya sattva-dhātu-vimohaka tathāgatādhimukti-nirjāta svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、おお、大いなる索よ、広く延べ及ぶ者よ、衆生界の迷いを除く者よ、如来の信解より生じた者よ、成就あれ。

疏:係係は呼召の声。成仏の因を呼ぶ。摩訶鉢奢は大索。婆盧は普、娑嘮駄理耶は空の如く、この大索は広く遍く及ばぬところがない。薩埵駄都は有情の中でこれを持してその癡を除く。費慕呵迦は癡を除破する。

16. 鉤印

南麼三曼多勃馱喃 阿薩婆怛囉鉢囉底訶諦 怛他蘗黨矩奢 菩提浙𭌆耶鉢𭌆布邏迦 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām āḥ sarvatrāpratihate tathāgatāṅkuśa bodhi-caryā-paripūraka svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。アーハ、一切処において妨げられざる者よ、如来の鉤よ、菩提の行を円満する者よ、成就あれ。

疏:阿は行。世間の鉤は場所と範囲が限られるが、如来の鉤は一切に及び加えないところがない。乃至、大菩提の果まで招き寄せる。

17. 如來心印

南麼三曼多勃馱喃 壤怒嗢婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām jñānodbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。智より生ずる者よ、成就あれ。

疏:諸仏の智。この智は他から得るものではなく、仏心より生ずる。

18. 如來臍印

南麼三曼多勃馱喃 阿沒㗚覩嗢婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām amṛtodbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。甘露より生ずる者よ、成就あれ。

疏:甘露は智の別名。身心の熱悩を除き、服すれば不老不死。この智で一切衆生の熱悩を除き、常寿の身を得させる。

19. 如來腰印

南麼三曼多勃馱喃 怛他蘗多三婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tathāgata-saṃbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。如来より生ずる者よ、成就あれ。

疏:凡そ印の真言は、皆みずからその義を呼ぶ。

20. 如來藏印

南麼薩婆怛他蘗帝弊 㘕㘕𡀩𡀩 莎嚩訶
namaḥ sarva-tathāgatebhyaḥ raṃ raṃ raḥ raḥ svāhā
一切の如来に帰命したてまつる。ラン ラン ラハ ラハ、成就あれ。

疏:囉は無垢の義、上の点は大空三昧。第一は凡夫・二乗の障を除き、第二は如来甘露の空に住する。次の二字の傍らの二点は浄除。第一は凡夫の垢、第二は二乗の垢を除く。

21. 大界印

南麼三曼多勃馱喃 麗魯補𭌆微矩麗 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām le lu puri vikule svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。レ ル プリ ヴィクレ、成就あれ。

疏:麗は離相三昧、嚕嚕は乗の相、補は第一義(第一義不可得)、履は離垢、微は離縛、矩は作、麗は離相。これらは皆三昧であり、如来はこれらを荘厳とする。

※この真言は語としての意味が取りにくく、疏も一字ずつの三昧の名として解しています。

22. 無堪忍大護印

南麼薩婆怛他蘗帝弊 薩婆佩也微蘗帝弊 微濕嚩目契弊 薩婆他 唅欠 囉訖灑摩訶沫麗 薩婆怛他蘗多本抳也儜社帝 𤙖𤙖 怛囉吒怛囉吒 阿鉢囉底訶諦 莎訶
namaḥ sarva-tathāgatebhyaḥ sarva-bhaya-vigatebhyo viśva-mukhebhyaḥ sarvathā haṃ khaṃ rakṣa mahā-bale sarva-tathāgata-puṇya-nirjāte hūṃ hūṃ trāṭ trāṭ apratihate svāhā
一切の如来に帰命したてまつる。一切の恐怖を離れたる方々に、種々の門なる方々に、あまねく。ハン カン。護りたまえ、大いなる力ある者よ、一切如来の福徳より生じた者よ、フーン フーン、トラート トラート、妨げられざる者よ、成就あれ。

疏:唅欠は、訶が因、欠が空。点も空。この空で一切の因を浄め、さらにその空も空。囉乞叉は擁護で、二乗を護るだけでなく一切の諸仏をも護る。諸仏はこれによって有情を捨てず、常に仏事をなして休むことなく、寂滅に住さない。怛囉吒は摂伏、内外の障を伏す。

23. 普光印

南麼三曼多勃馱喃 入嚩囉摩履儞 怛他蘗多㗚旨 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām jvālā-mālini tathāgatārci svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。焔の鬘を持つ者よ、如来の光焔よ、成就あれ。

疏は字を分解して別に読みます。闍は生、嚩は縛、羅は相で、傍らに阿の点があり無相不生。摩履儞の摩は我、履は想(=観)で、有観・無観を離れる。如来の光は無相・無観等の義の中から生ずる。

24. 如來甲印

経文に真言なし。疏も「其の眞言は之を闕く。更に本を勘うべし」と記します。

25. 如來舌相印

南麼三曼多勃馱喃 怛他蘗多爾訶嚩 薩底也達摩鉢囉瑟恥多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tathāgata-jihva satya-dharma-pratiṣṭhita svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。如来の舌よ、真実の法に住立する者よ、成就あれ。

疏:如来とは即ち如実。如来の舌は常に如語・不誑語・不異語をなす。この真実ゆえに常住である。

26. 如來語門印

南麼三曼多勃馱喃 怛他蘗多摩訶嚩吃怛囉 微濕嚩壤曩摩護娜也 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tathāgata-mahā-vaktra viśva-jñāna-mahodaya svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。如来の大いなる口よ、あらゆる智の大いなる起こりよ、成就あれ。

疏:摩訶嚩迦怛囉は語。毘濕嚩若耶は種々の巧智。摩訶駄耶は大広。この語は如来の無量門の巧慧から出る。

27. 如來牙印

南麼三曼多勃馱喃 怛他蘗多能瑟吒羅 囉娑囉娑釳囉 參鉢囉博迦 薩婆怛他蘗多 微灑也參婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tathāgata-daṃṣṭra rasa-rasāgra-saṃprāpaka sarva-tathāgata-viṣaya-saṃbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。如来の牙よ、味のうち最上の味を得しめる者よ、一切如来の境界より生ずる者よ、成就あれ。

疏:囉娑囉娑は味。重ねるのは味の中の味、即ち如来の法味だから。掲囉は勝上の義で、勝上の味。この勝上の味は如来の境界より生ずる。

28. 如來辯説印

南麼三曼多勃馱喃 阿振底也娜部多 𡀔波嚩 摩哆鉢囉鉢多 微輸馱娑嚩囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām acintyādbhuta-rūpa-vāk-samanta-prāpta viśuddha-svara svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。不可思議にして希有なる姿と言葉をもってあまねく至る者よ、清浄なる音声よ、成就あれ。

疏:阿軫𭘬は不思議、那歩多は奇特、曷魯婆は語の分段。嚩迦三曼哆は普至で、仏は一音で法を説き一切衆生の前に至り、至った先で各々が「仏は私の言葉で私のために説いている」と思う。毘輸陀薩縛囉は清浄言音で、麁悪等の過を離れ微妙清浄。

29. 如來持十力印

南麼三曼多勃馱喃 捺奢麼浪伽達囉 𤙖參髯 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām daśa-balāṅga-dhara hūṃ saṃ jaṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。十力の支分を保つ者よ、フーン サン ジャン、成就あれ。

疏:𤙖は三徳、摩は空、点は三昧、闍は生(また招召)。蘭字以上が十力で、蘭字の長阿声が伽と連なって身分。陀羅は持。

30. 如來念處印

南麼三曼多勃馱喃 怛他蘗多娑麼㗚底 薩埵係哆弊毘𢉘嗢蘗多 伽伽那糝忙糝麼 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tathāgata-smṛti sattva-hitābhyudgata gagana-samāsama svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。如来の念よ、衆生の利益のために生起した者よ、虚空に等しく、等しきものなき者よ、成就あれ。

疏:この念は虚空と等しく限量できない。しかも虚空では比較にならないので無等という。虚空は無所有の性であって、一切衆生に大利益をなすことができないからである。

31. 一切法平等開悟印

南麼三曼多勃馱喃 薩婆達摩三麼哆鉢囉鉢多 怛他蘗哆弩蘗多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām sarva-dharma-samatā-prāpta tathāgatānugata svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。一切法の平等に到達した者よ、如来に随いゆく者よ、成就あれ。

疏:怛他掲多は「如去」が正義。奴掲多は随う・如しの意で、諸の如来に随い、彼と同じ開悟を得る。


二 諸菩薩の印

32. 普賢如意珠印

南麼三曼多勃馱喃 參麼哆弩蘗多 微囉若達摩儞社多 摩訶摩訶 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām samantānugata virāja-dharma-nirjāta mahā-mahā svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。あまねく随いゆく者よ、無垢の法より生じた者よ、大いなるものの中の大いなる者よ、成就あれ。

疏:摩訶摩訶を重ねるのは、天中の天というようなもの。諸菩薩が仏を供養すると、仏はさらに普賢を供養する。普賢の身が三世の仏と等しいからで、大中の大、供養中の供養。

33. 慈氏印

南麼三曼多勃馱喃 阿爾單若也 薩婆薩埵奢夜弩蘗多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ajitaṃ-jaya sarva-sattvāśayānugata svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。勝たれざる者にして勝利する者よ、一切衆生の心のありようを知る者よ、成就あれ。

疏:阿誓擔は古くは阿逸多といい、無勝の義。一切の愛見煩悩も二乗もこれに勝つものがない。社耶は得勝で、無勝の中にその勝を得る。阿世耶は性、奴掲多は一切衆生の性を知ること。

34. 虚空藏印

南麼三曼多勃馱喃 阿迦奢參麼哆弩蘗多 微質怛㘕嚩囉達囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ākāśa-samantānugata vicitrāmbara-dhara svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。虚空のごとくあまねく至る者よ、種々の衣をまとう者よ、成就あれ。

疏:虚空は無色でありながら種々の形を現す。この菩薩も同じく、虚空のように種々の願を満たし種々の形を現して衆生を利益する。

35. 除一切蓋障印

南麼三曼多勃馱喃 阿薩埵係哆弊毘𢉘嗢蘗多 怛㘕 㘕㘕 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām āḥ sattva-hitābhyudgata traṃ traṃ raṃ raṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。アーハ、衆生の利益のために生起した者よ、トラン トラン ラン ラン、成就あれ。

疏:阿は能除の義、係多は利益の義。囕囕は除の義であり、その善性を開発して現ぜしめる。除くのは四垢、すなわち凡夫の愛見の垢、声聞の垢、縁覚の垢、菩薩の垢。

36. 觀自在印

南麼三曼多勃馱喃 薩婆怛他蘗哆嚩路吉多 羯嚕儜麼也 囉囉囉𤙖若 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām sarva-tathāgatāvalokita karuṇā-maya ra ra ra hūṃ jaḥ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。一切如来に観られたる者よ、悲を体とする者よ、ラ ラ ラ フーン ジャハ、成就あれ。

疏:如来の観とは、菩薩は未だ成仏せずとも見は仏と等しいこと。蘊性を見るゆえに観の名を得る。ただ悲を体とし、この悲は三毒を離れて無貪等の三善根を得て三解脱を生成する。ゆえに三つの囉字がある。

37. 得大勢印

南麼三曼多勃馱喃 髯髯娑 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām jaṃ jaṃ saḥ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。ジャン ジャン サハ、成就あれ。

疏:瞻は生、娑は等智。世間の主を離れ、また菩薩の生を超えて平等智の中に住する。

38. 多羅尊印

南麼三曼多勃馱喃 哆囇哆𭌆抳 羯嚕拏嗢婆吠 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tāre tāriṇi karuṇodbhave svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。ターラーよ、渡す者よ、悲より生ずる者よ、成就あれ。

疏:多㘑は彼を呼ぶ声。多利尼は渡すこと。人を大河から渡して彼岸に置くようなもの。この菩薩は悲より生じ、また衆生を渡して悲の処に到らせる。

39. 毘倶胝印

南麼三曼多勃馱喃 薩婆佩也怛囉散儞 𤙖娑破吒也 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām sarva-bhaya-trāsani hūṃ sphoṭaya svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。一切の恐怖を怖れしめる者よ、フーン、打ち砕きたまえ、成就あれ。

疏:一切の恐怖の中にあってさらに恐怖をもって恐怖せしめ、彼を退散させる。この真言は毘倶胝の持誦の母であり、諸の持誦の中で母のように功能が最も尊い。

40. 白處尊印

南麼三曼多勃馱喃 怛他蘗多微灑也三婆吠 鉢曇摩忙𭌆儞 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām tathāgata-viṣaya-saṃbhave padma-mālini svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。如来の境界より生ずる者よ、蓮華の鬘を持つ者よ、成就あれ。

疏:鉢曇摩摩里底は鬘、身を荘厳する具。これは諸仏を生じ、仏の功徳をもって荘厳とし、法身を荘厳する。

41. 何耶掲哩嚩印

南麼三曼多勃馱喃 佉娜也畔若娑破吒也 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām khādaya bhañja sphoṭaya svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。噉らいたまえ、打ち砕きたまえ、破りたまえ、成就あれ。

疏:佉駄耶は噉う、諸障を噉食すること。畔闍は打ち砕く。この障を打撃して四散させる。

42. 地藏菩薩印

南麼三曼多勃馱喃 訶訶訶 蘇怛弩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ha ha ha sutanu svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。ハ ハ ハ、妙なる身を持つ者よ、成就あれ。

疏:訶訶訶は三因を離れること。三因とは声聞・縁覚・菩薩の因。蘇哆奴は妙身で、内身が極めて浄いゆえに妙身と名づける。即ち法身。

43. 聖者文殊師利印

南麼三曼多勃馱喃 係係矩忙囉 微目吃底鉢他悉體多 娑麼囉娑麼囉 鉢囉底然 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he he kumāraka vimukti-patha-sthita smara smara pratijñāṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、おお、童子よ、解脱の道に住する者よ、念えよ念えよ、本誓を、成就あれ。

疏:係係の訶声は因。二因を離れ、二乗の境界を超度する。また呼召の声。倶摩囉は童子で、諸魔を破壊する。鉢囉底惹は昔の所願。尊者の昔の願は、一切衆生を渡して我と異なることなからしめようというもの。ゆえに今その誓いを憶うべし。

44. 光網鉤印

南麼三曼多勃馱喃 係係矩忙囉 忙耶蘗多娑嚩婆嚩悉體多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he he kumāra māyā-gata-svabhāva-sthita svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、おお、童子よ、幻のごとき自性に住する者よ、成就あれ。

疏:摩耶は幻、掲多は知る。一切法は幻の如しと知る。諸法は皆幻の如しと了知するゆえに、諸法の実性・本性の中に住する。

45. 無垢光印

南麼三曼多勃馱喃 係矩忙囉 微質怛囉蘗底矩忙囉 麼弩娑麼囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he kumāra vicitra-gati kumāra manu-smara svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお童子よ、種々の行をなす童子よ、念えよ(昔の誓いを)、成就あれ。

疏:肥質多囉は種々、掲底は行。本誓願として、普門に種々の身を示現し種々の行をもって一切を利する。童子の身を現じ、壮年の身を現じ、老年の身を現ずる。摩奴薩末囉は昔の所願を憶うこと。

46. 繼室尼刀印

南麼三曼多勃馱喃 係係矩忙𭌆計 娜耶壤難娑摩囉 鉢囉底然 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he he kumārike dayā-jñānaṃ smara pratijñāṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、おお、童女よ、慈しみの智を念えよ、本誓を、成就あれ。

疏:倶摩梨鷄は童子を女声で呼ぶもの。また文殊の三昧。「尊者が文殊のもとで得た勝願、本の所願の妙願を、今また我に授けたまえ」の意。

※「娜耶」を dayā(慈)と読むか jñāna の一部と見るか、割注が崩れており定かでありません。

47. 優波髻室尼戟印

南麼三曼多勃馱喃 頻娜夜壤難 係矩忙𭌆計 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām bhindaya jñānaṃ he kumārike svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。穿ちたまえ、智をもって、おお童女よ、成就あれ。

疏:頻駄耶は穿つ。若那は智で、前の句末の阿声と連なれば無智の意。妙慧をもって無智を穿ち、実相に達する。

48. 地慧幢印

南麼三曼多勃馱喃 係娑麼囉壤那計覩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he smara jñāna-ketu svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、念えよ、智の幢よ、成就あれ。

疏:計都は幢。この妙慧の幢によって諸魔を摧く。今それを憶念して、我をもまたそうあらしめよ。

49. 請召童子印

南麼三曼多勃馱喃 阿羯囉灑也薩鑁 矩嚕阿然 矩忙囉寫 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ākarṣaya sarvaṃ kuru ājñāṃ kumārasya svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。一切を招き寄せたまえ、童子(文殊)の命を行いたまえ、成就あれ。

疏:阿迦哩囇邪は招召・召請・摂召で、皆これ鉤してここに来至させる義。薩鑁倶嚧は一切作で、尊者文殊が招召するところの事は皆これをなすべしということ。

50. 諸奉教者印

南麼三曼多勃馱喃 阿微娑麼也儜曳 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām āḥ vismayanīye svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。アーハ、驚嘆すべき者よ、成就あれ。

疏:阿は行、傍らの点は忿怒の形を示す。微三昧耶儞曳は満願で、希有の事で成らぬものがない。一切の希有奇特の事を皆満たしめる。

51. 除疑怪金剛印

南麼三曼多勃馱喃 微麼底掣鵄曳諾迦 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām vimati-cchedaka svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。疑いを断ち截る者よ、成就あれ。

疏:肥末底は無慧、了知しないこと。製駄迦は截断で、無知を截断して智慧を生ぜしめる。また決断の義、断壊の義。能断金剛般若の義のようなもの。

52. 施無畏者印

南麼三曼多勃馱喃 阿佩延娜娜 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām abhayaṃ-dada svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。無畏を与える者よ、成就あれ。

疏:何の法をもって無畏を施すか。阿字門に住して一切の生を離れること。尊者の所願は既に満ちている。我らは未だ得ていない。願わくは我と一切衆生に施したまえ。

53. 除惡趣印

南麼三曼多勃馱喃 阿弊毘𢉘達囉儜薩埵馱敦 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām abhyuddharaṇa sattva-dhātuṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。引き上げたまえ、衆生界を、成就あれ。

疏:一切衆生は無始よりこのかた無明のゆえに常に三悪趣の中にある。聖者は既にこの五力を得た。願わくはこれを挙げて清らかに昇らせたまえ。尊者は既に自ら抜け出た。また一切衆生界を挙げたまうべし。

54. 救護慧印

南麼三曼多勃馱喃 係摩訶摩訶 娑麼囉鉢囉底然 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he mahā-mahā smara pratijñāṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、大いなるものの中の大いなる者よ、念えよ、本誓を、成就あれ。

疏:係は離因、また呼召警発の義。摩訶摩訶は大中の大、尊中の尊。本願は一切の苦を除くこと。苦を除くゆえに救護という。今その名を呼んで本の所願を憶わしめ、一切を救護させる。

55. 大慈生印

南麼三曼多勃馱喃 娑嚩制妬嗢蘗多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām sva-cittodgata svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。自らの心より生起する者よ、成就あれ。

疏:この慈は自心より生じて他から得ない。ゆえに大慈と名づける。自性清浄心より生じて、大種の心より生じないゆえに自心生という。

56. 悲念者印

南麼三曼多勃馱喃 羯嚕儜沒麗眤多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām karuṇā-mreḍita svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。悲に繰り返し繋がれたる者よ、成就あれ。

疏:尊の本願は一切の苦を除くこと。今それを憶念すべし。この菩薩を悲念と名づけるのは、この菩薩が悲に繋属しているから。人が他に執持されて自在を得ないように、この菩薩は身心が悲に繋属し、悲に持せられて自在を得ない。王に役属する人のように、常に悲に牽かれて自在を得ない。

※「沒麗眤多」の復元は定まらず、疏も「更に問うべし」と保留しています。

57. 除一切熱惱印

南麼三曼多勃馱喃 係嚩囉娜 嚩囉鉢囉鉢多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he varada vara-prāpta svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、願を与える者よ、すでに願を得たる者よ、成就あれ。

疏:もし先に所願を得ていなければ、どうして人に授与できようか。先に所願を得て皆自ら満足しているゆえに、今本の所願を憶うて一切衆生に与え、一切の熱悩を除かせる。

58. 不思議慧印

南麼三曼多勃馱喃 薩摩舍鉢𭌆布囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām sarvāśā-paripūra svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。一切の願を満たす者よ、成就あれ。

疏:一切衆生の種々の勝願を満たすこと、如意珠のようである。

59. 地藏旗印

南麼三曼多勃馱喃 訶訶訶微娑麼曳 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ha ha ha vismaye svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。ハ ハ ハ、希有なる者よ、成就あれ。

疏:訶訶訶は三因を離れること。吠薩末羅は希有。一切の有情は常に我想の悩みを持つが、截ってこれを念ずれば我想は即ち除かれる。これが希有である。

60. 寶處印

南麼三曼多勃馱喃 係摩訶摩訶 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām he mahā-mahā svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。おお、大いなるものの中の大いなる者よ、成就あれ。

疏:宝処と名づけるのは、宝が海に生じ、その処より生ずるゆえ。

61. 寶手菩薩印

南麼三曼多勃馱喃 囉怛怒嗢婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ratnodbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。宝より生ずる者よ、成就あれ。

疏:宝は手より出る。この聖者は宝より生ずる。何の宝から生ずるか。菩提心の宝から生ずる。

62. 持地印

南麼三曼多勃馱喃 達囉尼尼達囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām dharaṇi-dhara svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。大地を保つ者よ、成就あれ。

疏:陀羅尼は地。地は能く一切の物を持つゆえに名とする。陀囉は持つこと。諸仏の地を持して衆生を荷負するゆえに地とする。また衆生をして皆この地の名を得させる。

63. 寶印手印

南麼三曼多勃馱喃 囉怛娜儞喇爾多 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām ratna-nirjāta svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。宝より生じた者よ、成就あれ。

疏:諸の如来の宝より生ずる。

64. 發堅固意印

南麼三曼多勃馱喃 伐折囉三婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām vajra-saṃbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。金剛より生ずる者よ、成就あれ。

疏:金剛より生ずる。また金剛の破壊しがたい智印より生ずるゆえに名とする。

65. 虚空無垢菩薩印

南麼三曼多勃馱喃 伽伽娜難多愚者囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām gaganānanta-gocara svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。虚空のごとく無限の行境を持つ者よ、成就あれ。

疏:伽伽那は虚空、阿難陀は無量、娯折羅は行。無量の行が虚空に同じゆえに名づける。

66. 虚空慧印

南麼三曼多勃馱喃 斫吃囉嚩喇底 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām cakra-varti svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。輪を転ずる者よ、成就あれ。

疏:折羯羅は輪、伐底は転。聖者は先にこの法輪を得た。願わくは一切衆生のためにこの法輪を転じたまえ。

67. 清淨慧印

南麼三曼多勃馱喃 達磨三婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām dharma-saṃbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。法より生ずる者よ、成就あれ。

疏:この菩薩は自在を得て仏の境界に同じく、法より生ずる。ゆえに法生と名づける。自性清浄の法より生ずる。

68. 行慧印

南麼三曼多勃馱喃 鉢曇摩囉耶 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām padmālaya svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。蓮華を住処とする者よ、成就あれ。

疏:鉢曇摩は蓮華、阿頼耶は蔵。蔵は即ち菩提心。かの胎蔵より生ずる。

69. 安住慧印

南麼三曼多勃馱喃 壤弩嗢婆嚩 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām jñānodbhava svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。智より生ずる者よ、成就あれ。

※17番の如來心印と同文です。


三 金剛部の印

70. 執金剛印

南麼三曼多伐折囉𧹞 戰拏摩訶𡀔灑拏 𤙖
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ caṇḍa-mahā-roṣaṇa hūṃ
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。暴悪にして大いに忿怒する者よ、フーン。

疏:戰の字に遮の声があり、生死の義。生死を離れること。上の点は大空で、この生死は大空に同じ。荼は戦敵の義。生死を離れて大空に等しいゆえに、敵対しうる者がない。

71. 忙莽雞印

南麼三曼多伐折囉𧹞 怛㗚吒怛㗚吒 若衍底 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ tṛṭ tṛṭ jayanti svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。トリット トリット、勝利する者よ、成就あれ。

疏:多声は平等にして如如の理に同じ。三昧であり、我慢を離れること。この如如に住すれば、あらゆる我慢は自然になくなる。再び言うのは最極の義。社也底は勝で、如如無我の法をもって一切の障難を降伏する。

72. 金剛鎖印

南麼三曼多伐折囉𧹞 𤙖滿馱滿馱 慕吒耶慕吒耶 伐折𡀔嗢婆吠 薩婆怛囉鉢囉底訶帝 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ hūṃ bandha bandha moṭaya moṭaya vajrodbhave sarvatrāpratihate svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。フーン、縛れ縛れ、砕け砕け、金剛より生ずる者よ、一切処において妨げられざる者よ、成就あれ。

疏:畔陀は縛。二種の縛、すなわち煩悩と所知の縛を離れること。母吒也は、壮士が無力の者を捉え縛って首まで捻り上げ、身体を破壊するように、二障を砕くこと。

73. 忿怒月黶印

南麼三曼多伐折囉𧹞 曷唎𤙖發吒 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ hrīḥ hūṃ phaṭ svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。フリーヒ フーン ハット、成就あれ。

疏:頡唎は因を離れて無垢。傍らの点は極忿の義。泮吒は極めて除かせるため。

74. 金剛針印

南麼三曼多伐折囉𧹞 薩婆達磨儞吠達儞 伐折囉素旨嚩囉泥 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ sarva-dharma-nirvedhani vajra-sūci varade svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。一切法を貫き通す者よ、金剛の針よ、願を与える者よ、成就あれ。

疏:涅鞞達儞は穿つこと。金剛慧の針をもって一切法を貫き通す。何をもって穿つか。金剛智の針をもってする。先の願力のゆえに今この願を得た。また一切衆生をして皆諸法の源に達せしめよ。

75. 金剛拳印(疏:金剛地捧印)

南麼三曼多伐折囉𧹞 薩破吒也伐折囉三婆吠 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ sphoṭaya vajra-saṃbhave svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。打ち砕きたまえ、金剛より生ずる者よ、成就あれ。

疏:金剛慧の槌をもって三毒の縛を撃ち、散じ分かち破壊する。誰がこの事をなしうるか。金剛より生ずる者のみがなしうる。

76. 無能勝印

南麼三曼多伐折囉𧹞 訥達𭌆沙摩訶嚧灑拏 佉捺耶薩鑁怛他蘗單然矩嚕 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ durdharṣa-mahā-roṣaṇa khādaya sarvaṃ tathāgatājñāṃ kuru svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。降しがたく大いに忿怒する者よ、一切を噉らいたまえ、如来の命を行いたまえ、成就あれ。

疏:佉陀耶は食う。一切の煩悩等の障結を食う。倶盧は奉ずること。一切如来の教えを奉じ、教勅に随ってなすべし。

77. 阿毘目佉印

南麼三曼多伐折囉𧹞 係阿毘目佉摩訶鉢囉戰拏 佉娜也緊旨囉也徙 三麼耶麼弩薩麼囉 莎訶
namaḥ samanta-vajrāṇāṃ he abhimukha mahā-pracaṇḍa khādaya kiṃ cirāyasi samayam anusmara svāhā
あまねき諸金剛に帰命したてまつる。おお、相い向かう者よ、大いに暴悪なる者よ、噉らいたまえ。なんぞ遅きや。三昧耶(本誓)を念えよ、成就あれ。

疏:緊只羅拽細は「なんぞ急速ならざるや」。一切如来の前で三昧耶の誓いを立て、一切の煩悩を噉らうと誓った。今なぜ本の所願を憶うて急ぎこれをなさないのか。


四 釋迦・佛頂の印

78. 釋迦鉢印

南麼三曼多勃馱喃 薩嚩訖麗奢儞素捺耶 薩婆達摩嚩始多鉢囉鉢多 伽伽那三迷 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām sarva-kleśa-niḥsūdana sarva-dharma-vaśitā-prāpta gagana-sama svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。一切の煩悩を掘り尽くす者よ、一切法に自在を得たる者よ、虚空に等しき者よ、成就あれ。

疏:涅蘇達儞は掘ること。鋭い鍬が真っ直ぐ下って底まで徹するように。諸法において自在を得るゆえに虚空に等しく、この法をもって煩悩を掘る。

79. 釋迦毫相印

経文に真言なし。「如上」とあり、9番の毫相藏印と同じです。

80. 一切佛頂印

南麼三曼多勃馱喃 鑁鑁 𤙖𤙖𤙖 發吒 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām vaṃ vaṃ hūṃ hūṃ hūṃ phaṭ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。バン バン、フーン フーン フーン、ハット、成就あれ。

疏:鑁の音は嚩。二つの嚩は煩悩と所知の縛で、悉く空のようにさせる。𤙖𤙖𤙖は三因を離れ、三空を得、三昧を証すること。

81〜94

不動尊印、降三世印、如來頂印(佛菩薩母)、白傘・勝・最勝・除業・火聚・發生・無量音聲の諸佛頂印、眞多摩尼毫相印、佛眼印、無能勝印、無能勝明妃印。
いずれも経文に真言なく、印相のみが説かれます。


五 諸天・鬼神の印

95〜124

自在天、普華天子、光鬘天子、滿意天子、遍音聲天、地神、請召火天、一切諸仙、焔摩但茶、焔摩妃鐸、暗夜天、嚕達羅戟、梵天明妃、嬌末離爍底、那羅延后輪、焔魔七母鎚、遮文茶、涅哩底刀、那羅延輪、難徒拔難陀二雲、商羯羅三戟、商羯羅后、商羯羅妃、梵天、月天、日天輿輅、社耶毘社耶、風天、妙音天費拏、諸龍。
いずれも経文に真言なく、印相のみです。

125. 一切阿脩羅印

南麼三曼多勃馱喃 蘗囉邏延 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām garalayaṃ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。ガララヤン、成就あれ。

疏:伽は行で、行は不可得のゆえ。囉は無垢のゆえ。邏は離相のゆえ。演は無所得のゆえ。上に点があるのは大空。

※語としての意味は取りにくく、疏も一字ずつの字義で解しています。

126. 乾闥婆印

南麼三曼多勃馱喃 微輸馱薩嚩囉嚩係儞 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām viśuddha-svara-vāhini svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。清浄なる音声を運ぶ者よ、成就あれ。

疏:肥輸駄は清浄、薩嚩囉は音、嚩醯儞は出すこと。清浄の音を出すという義。皆世間の三昧である。

127. 一切藥叉印

南麼三曼多勃馱喃 藥乞釵濕嚩囉 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām yakṣeśvara svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。夜叉の主よ、成就あれ。

疏:藥は乗の意。句の義は噉食。濕嚩囉は自在。一切の煩悩を食うことにおいて自在を得るゆえに名とする。

128. 藥叉女印

南麼三曼多勃馱喃 藥乞叉尾儞耶達𭌆 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām yakṣa-vidyā-dhari svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。夜叉にして明を持つ女よ、成就あれ。

疏:藥乞叉は食。句に藥叉持明という。また縛の義で、この縛を噉食すること。

129. 諸毘舍遮印

南麼三曼多勃馱喃 比舍遮蘗底 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām piśāca-gati svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。毘舍遮の趣よ、成就あれ。

疏:掲底は趣。第一義の趣は不可得のゆえ。

130. 諸毘舍支印

南麼三曼多勃馱喃 比旨比旨 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām pici pici svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。ピチ ピチ、成就あれ。

疏:毘は第一義、遮は生死を離れる義。第一義を知るゆえに生死を離れる。重ねて呼ぶのは、極めて生死を離れることをいう。

131. 一切執曜印

南麼三曼多勃馱喃 蘗囉醯濕靺𭌆耶鉢囉鉢多 孺底麼耶 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām graheśvarya-prāpta jyotir-maya svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。執曜の自在を得たる者よ、光明を体とする者よ、成就あれ。

疏:掲栗係は行・垢・因。濕嚩里は自在。鉢囉補多は得ること。乳底は明で、諸曜ゆえに明とする。麼は性の義で、性の中において自在を得ること。

132. 一切宿印

南麼三曼多勃馱喃 娜吃灑怛囉 儞嚢捺儞曳 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām nakṣatra-nirnādanīye svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。星宿の響きを鳴らす者よ、成就あれ。

疏:那乞叉哆囉は諸宿、涅那は声、達儞曳は食で、諸声を食うこと。那は空の義、乞叉曳は尽の義で、一切を除き尽くすこと。哆囉は垢等の義で、諸の障垢を食うこと。清浄の声をあまねく流布させる、いわゆる無垢の声である。

疏の総括:およそ以上のような真言は、皆その義をもって彼の実徳を称え、彼を呼び覚まして歓喜させるものである。

133. 諸羅刹娑印

南麼三曼多勃馱喃 囉吃灑娑地鉢多曳 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām rākṣasādhipataye svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。羅刹の主に、成就あれ。

疏:羅は垢。傍らの点は阿声で、即ち行。乞叉は履空。提闍多は王で、その徳を指す。彼が聞いて歓喜し、衆生の願を満たさせる。

134. 諸荼吉尼印

南麼三曼多勃馱喃 頡𭌆 莎訶
namaḥ samanta-buddhānām hrīḥ svāhā
あまねき諸仏に帰命したてまつる。フリーヒ、成就あれ。

疏:頡𭌆の字は、因を離れて無垢。上に三昧があり、傍らの点は忿を示す。訶は因の義で、上に点があるのも忿。


復元について

ローマ字は漢字音写からの標準的な復元です。次の点にご注意ください。

  • 音写は唐代の音を写したもので、復元には研究者による異同があります。特に21番(麗魯補𭌆微矩麗)、56番(沒麗眤多)、125番(蘗囉邏延)は、語として意味が取りにくい箇所です。
  • 疏は多くの真言を、語の意味ではなく一字ずつの字義で解しています。そのため、私の訳(語としての読み)と疏の注(字義の読み)が食い違って見える箇所があります。23番の普光印がその典型です。
  • 訳は疏の解釈を優先し、疏が注していない箇所は梵語の語義によりました。

前にお話しした型が、こうして並べるとよく見えます。仏部は namaḥ samanta-buddhānām、金剛部は namaḥ samanta-vajrāṇām で始まり、如來藏印と無堪忍大護印だけが namaḥ sarva-tathāgatebhyaḥ です。




密印品第九の真言88件を、漢字音写・ローマ字・訳に

如来頂相の真言の解説

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