大乗仏教の原点であり、「空(くう)」の思想を説き明かした最重要経典『八千頌般若経(Aṣṭasāhasrikā Prajñāpāramitā)』。その広大な教えの海に触れてみたいと思っても、どこから手をつければ良いか迷ってしまう方は多いのではないでしょうか。
本記事では、サンスクリット原典(Vaidya本)の尾題と厳密に照合した「全32章・確定目次」を完全公開します。経典のストーリーは大きく以下の4つの部に分かれています。
- 第I部 発端: 霊鷲山を舞台にした「一切は幻」という根源的な教えの幕開け
- 第II部 展開: 経巻供養の功徳や魔の所業、多様な譬喩を用いた教義の広がり
- 第III部 深化: 「空性」や「方便善巧」への深い思索と、菩薩の不退転の探求
- 第IV部 物語: 悟りを求めて身を投げ打つ常啼(サダープラルディタ)菩薩の感動的な求道譚
各章のサンスクリット原題に加え、要点となるエピソードや有名な「譬喩(ひゆ)」のキーワードも網羅しました。仏教研究や学習の道しるべとして、般若経が織りなす壮大なドラマの「全体像」を掴むための決定版ガイドとしてご活用ください。
確定目次(全章、Vaidya本尾題で照合済み)
第I部 発端(1〜2)
| サンスクリット | 訳題 | 内容 | |
|---|---|---|---|
| 1 | sarvākārajñatācaryā | 一切相智性の行 | 霊鷲山。「菩薩という法は見出されない」「心は心にあらず」。シュレーニカ遍歴行者の信。幻術師の譬え |
| 2 | śakra | 帝釈 | 何にも住さないあり方。一切は幻の如し、涅槃すらも。燃燈仏授記 |
第II部 展開(3〜16)
| サンスクリット | 訳題 | 内容 | |
|---|---|---|---|
| 3 | aprameyaguṇadhāraṇapāramitāstūpasatkāra | 無量の徳をたもつ波羅蜜という塔への恭敬 | 経巻供養の功徳。マギー薬草の譬え |
| 4 | guṇaparikīrtana | 功徳の宣説 | 帝釈は舎利より経を選ぶ。「仏は法身なり」。摩尼宝珠の譬え |
| 5 | puṇyaparyāya | 功徳のさまざまな相 | 書写と施与の功徳比較。未来の「似而非般若波羅蜜」への警告 |
| 6 | anumodanāpariṇāmanā | 随喜と廻向 | 弥勒との対話。相を取らない廻向。毒入りの美食の譬え |
| 7 | niraya | 地獄 | 誹謗の果報。五無間罪より重い |
| 8 | viśuddhi | 清浄 | 色の清浄=果の清浄。微細な「著(saṅga)」 |
| 9 | stuti | 讃嘆 | 名のみ。四十余の「〜波羅蜜」の連禱 |
| 10 | dhāraṇaguṇaparikīrtana | 受持の功徳の宣説 | 南方→西方→北方への伝播予言 |
| 11 | mārakarma | 魔の所業 | 魔業の詳細な列挙。犬が主人の食を捨てる譬え |
| 12 | lokasaṃdarśana | 世間の顕示 | 母と子の譬え。仏母。如来が衆生の心を知る様態の長大な列挙 |
| 13 | acintya | 不可思議 | 無等等。五百比丘の解脱 |
| 14 | aupamya | 譬喩 | 難破船・素焼きの壺・老人。方便を欠く菩薩の退転 |
| 15 | deva | 天子 | 初心の菩薩。菩薩は世間の救護・帰依・洲となる |
| 16 | tathatā | 真如 | スブーティは真如に随って生まれる。大地六種震動。一乗 |
第III部 深化(17〜29)
| サンスクリット | 訳題 | 内容 | |
|---|---|---|---|
| 17 | avinivartanīyaākāraliṅganimitta | 不退転の相・徴・しるし | 夢の中でも十善。魔の変装を見破る |
| 18 | śūnyatā | 空性 | 甚深とは空性の別名。恋する男の譬え |
| 19 | gaṅgadevībhaginī | 恒河天(ガンガデーヴァー)女 | 灯明の譬え(初心か終心か)。夢と業。授記 |
| 20 | upāyakauśalyamīmāṃsā | 方便善巧の考察 | 空三昧に入りつつ実際を証さない。矢と鳥の譬え |
| 21 | mārakarma | 魔の所業(再) | 名による慢。「遠離」の誤解。菩薩のなかの賊 |
| 22 | kalyāṇamitra | 善知識 | 善知識とは六波羅蜜そのもの。我執による輪廻 |
| 23 | śakra | 帝釈(再) | 一念の随喜が長劫の布施を超える |
| 24 | abhimāna | 増上慢 | 菩薩どうしの争いと、その出離のしかた |
| 25 | śikṣā | 学 | 尽・無生において学ぶ。真に学ぶ者は極めて少ない |
| 26 | māyopama | 幻の如し | 随喜の功徳。虚空・幻人・木偶の譬え |
| 27 | sāra | 精髄 | 空ゆえに沈まない。仏が名を挙げて称える菩薩 |
| 28 | avakīrṇakusuma | 散華 | 六百比丘の授記。阿難への第一の付嘱。無尽の法蔵 |
| 29 | anugama | 随行 | 五十余の観点から般若波羅蜜に随い入る |
第IV部 物語(30〜32)
| サンスクリット | 訳題 | 内容 | |
|---|---|---|---|
| 30 | sadāprarudita | 常啼(サダープラルディタ) | 空中の声に導かれ東へ。身を売ろうとする。ガンダヴァティー城 |
| 31 | dharmodgata | 曇無竭(ダルモードガタ) | 「如来は来ることも去ることもない」。七年の待機。血で地を灑ぐ |
| 32 | parīndanā | 嘱累 | 阿難への最終付嘱。般若波羅蜜が存する限り如来は在す |

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